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アネモメトリ -風の手帖-

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#240

中洲の老舗映画館 大洋映画劇場
― 福岡県福岡市

福岡市の中洲といえば九州一の歓楽街として有名ですが、かつては約20軒の映画館があり、「映画の街」と呼ばれていました。しかし、シネマコンプレックスの台頭などにより、中洲地区の映画館は次々に閉館し、現在残っているのは「大洋映画劇場」だけです。

外観

大洋映画劇場は、福岡大空襲で焼け野原となった福岡の人々を笑顔にしたいと、1946年4月、福岡市で建設業を営んでいた岡部重蔵さんが創業しました。同劇場はアメリカ最大手の映画協会「セントラル」の日本第一号契約館でもあります。オープニング上映作品は、チャプリンの『黄金狂時代』。公開2週間で60,624人を動員しました。
1952年に現在の4階建てビルになり、1957年には『銭形平次捕物控 まだら蛇』で、1日で10,388人動員という記録を打ち立てました。歴代動員数第1位は、1983年に公開された『E.T.』の163,644人です。現在は、ハリウッド映画や日本映画、アニメ映画の他、シネマ歌舞伎など、幅広い年齢層に向けた作品を上映、またライブビューイングなども行われています。

階段

カフェ

劇場の魅力は、昭和のレトロな雰囲気にあります。入口の扉を開けると、チケット売り場があります。チケットを買い、その先の階段で2階へ移動します。この階段が、これから始まる映画へのワクワク感を高めているようにも感じます。建物の古さは否めませんが、改装などにより、劇場内は快適に過ごせる空間となっています。
もう一つの魅力は、劇場に併設された「キネマカフェ」です。木目調のシックなインテリアが落ち着きを与えています。カフェで供されるバタートーストのメニュー表記は「バタァトースト」で、昭和の喫茶店の定番メニュー、クリームソーダもあります。

ボード

その大洋映画劇場ですが、建物の老朽化のため、2024年3月末に取り壊されることになりました。再開については未定だそうです。中洲の映画文化を守ってきた貴重な建築物であり、映画ファンの思い出がつまった場所でもあります。再開を願い、今後の動向に注目したいと思います。

参考
大洋映画劇場
https://www.nakasu-taiyo.co.jp/history.php

「中洲大洋 老朽化で取り壊しへ」『毎日新聞』2023年9月2日、朝刊。

(今長まゆみ)