アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

最新記事 編集部から新しい情報をご紹介。

風信帖 各地の出来事から出版レビュー

TOP >>  風信帖
このページをシェア Twitter facebook
#3

5月の風と城下カレイと散歩道
― 大分県日出町

別府湾、高崎山、暘谷城跡。これらの景色の中にいるとやわらかい風を感じることができます。
大分県日出(ひじ)町。温泉で有名な別府市の隣町。海と山に囲まれたこの町には、かつて日出城(暘谷城)がありました。暘谷城跡のすぐそばにある海には、真水が湧くところがあり、ここで育つマコガレイは「城下かれい」と呼ばれています。全国的に有名な関アジ関サバと比べ知名度は劣るものの、でも高級魚として珍重されています。江戸時代、もちろん平民は食べることなんてできなかった「殿様魚」で、通常の参勤交代の際には将軍家へ干物にして献上し、4年に1度の閏年には端午の節句に合わせ、生きた城下かれいを江戸まで運んだといわれています。日出から大坂までは船で、大坂からは海水に浸した紙に包み、早馬を乗り継いで運んだといわれており、費用は現在に換算すると3750万円もかかったそうです
今年で31年目をむかえる「城下かれい祭り」は毎年5月の第2土曜日に開催され城下かれいを求めてたくさんの人が訪れます。かつて3750万円もかけて運ばれた高級魚なだけあって、整理券はあっという間になくなります。しかし城下かれいが食べられなかったからといっても落ち込むことはありません。この町の魅力はそこだけではないのです
城下海岸遊歩道。豊岡島山と暘谷城跡の間の約2.5kmの散歩コースに、おが住む高崎山と波音の静かな別府湾を眺めながら歩く絶景があります。背筋を伸ばしながら遠くの山々を見渡し、潮の香りを目いっぱいに吸い込む。毎日のお散歩コースにしている人、ランニングをしている汗光る中学生たち、この景色を楽しみに来た観光客。この場所を訪れた人は一体何を感じているのでしょう
やわらかい5月の風を感じる日私の目の前の海底には、3750万円の城下かれいが今日も元気に泳いでいます。

(出口聡子)

城下海岸遊歩道と別府湾、高崎山

城下海岸遊歩道と別府湾、高崎山

日出城(暘谷城)跡

日出城(暘谷城)跡

清らかな真水の湧く海

清らかな真水の湧く海