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アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#98
2021.07

未来をまなざすデザイン

3 それぞれの受け継ぎかた 長崎・雲仙市
6)広がりと深さをつくる 「種を蒔くデザイン展」2
タネト 奥津爾さん3

種を蒔くデザイン展」は、2021年3月13日から29日に行われた。当初奥津さんが考えていたよりもはるかにスケールの大きなイベントとなった。
具体的には、3つのテーマ「農とデザイン」「環境問題とデザイン」「風土に根差すデザイン」に基づいた展示が4本。「プラスチックフリーの八百屋展」をタネトで、「城谷耕生プロダクトデザイン展」を刈水庵で、「種を蒔く仕事展」「種を蒔く料理展」をオンラインで行なった。直売所として誰でも入りやすい一方で、規格外とはねられてしまうものをすくいとるような試みであった。
これらはすべてWeb上で公開されており、オーガニックベースのホームページからアクセスできる。そのトップページに奥津さんはこう記している。

現代経済社会では、規格外として流通から外される在来種の野菜たち。
しかし本来は、一代限りで終わることのない、100年1000年続いていく生命力を宿した種です。
このデザイン展はそんな種たちのように、消費されるためでなく、普遍的で、未来の子どもたちへ残す意思と確かさを宿したデザイン展を目指しています。(中略)今を生きる皆様と、50年後の、100年後の若者たちにこの展から何かを感じとってほしいと心から願っています。

各イベントは錚々たるメンバーが揃った。奥津さんの人脈だけでなく、イベントの趣旨に賛同し、参加してくれた方々も多い。そして、それぞれの作品や言葉、ふるまいが最終的にひとつの大きな流れをつくっていった。

プラスチックフリーの八百屋展 タネト

展示期間中、タネトの野菜売り場を完全プラスチックフリーに。土と野菜をディスプレイした野菜売り場がデザインという趣旨。プロジェクトチームは雲仙市在住のメンバーが中心。若手デザイナー、自然エネルギー研究者、有機農家、八百屋、市職員、家具職人などの力を結集した。「1. プラ包装ゼロ」「2. 無駄な電力を使わない」「3. 過大な投資をしない」「4. 農家に負担を押し付けない 」「5. 見た目も美しく、楽しい」の5つを実現した。(撮影:繁延あずさ)

展示期間中、タネトの野菜売り場を完全プラスチックフリーに。土と野菜をディスプレイした野菜売り場がデザインという趣旨。プロジェクトチームは雲仙市在住のメンバーが中心。若手デザイナー、自然エネルギー研究者、有機農家、八百屋、市職員、家具職人などの力を結集した。「1. プラ包装ゼロ」「2. 無駄な電力を使わない」「3. 過大な投資をしない」「4. 農家に負担を押し付けない 」「5. 見た目も美しく、楽しい」の5つを実現した。(撮影:繁延あずさ)

種を蒔く仕事展 オンライン

デザイナーや職人、作家に八百屋……。「つくる仕事」にたずさわる8名にインタビューを行い、インスタグラムのライブで配信した。メンバーはデザイナーの原田祐馬さんや柳原照弘さん、皆川明さん、新潟のエフスタイルに鎌倉のポンポンケークスなど。インタビューはすべてアーカイヴされ、誰でも見ることができる。(撮影:白石知香)

デザイナーや職人、作家に八百屋……。「つくる仕事」にたずさわる8名にインタビューを行い、インスタグラムのライブで配信した。メンバーはデザイナーの原田祐馬さんや柳原照弘さん、皆川明さん、新潟のエフスタイルに鎌倉のポンポンケークスなど。インタビューはすべてアーカイブされ、誰でも見ることができる。(撮影:白石知香)

種を蒔く料理展 オンライン

40年にわたって、80種におよぶ在来種の種を守り継いできた農家・岩崎政利さん。6組の料理人が岩崎さんの野菜を使った料理をつくり、陶芸家の器にもりつけた。岩崎さん、料理人、陶芸家のコラボレーション作品ともいえる。Webサイトで公開され、現在も閲覧可能。料理人は東京・中目黒から雲仙に移転した「BEARD」原川慎一郎さん、雲仙の奥津典子さん、京都「モンク」の今井義浩さん、東京・杉並のオカズデザインなど。奥津さんは在来種の種を守り継ぐイベント「種市」を主宰するうち、岩崎さんと出会った。それをきっかけに雲仙に移住した。(撮影:繁延あずさ)

40年にわたって、80種におよぶ在来種の種を守り継いできた農家・岩崎政利さん。6組の料理人が岩崎さんの野菜を使った料理をつくり、陶芸家の器にもりつけた。岩崎さん、料理人、陶芸家のコラボレーション作品ともいえる。Webサイトで公開され、現在も閲覧可能。料理人は東京・中目黒から雲仙に移転した「BEARD」原川慎一郎さん、雲仙の奥津典子さん、京都「monk」の今井義浩さん、東京・杉並のオカズデザインなど。奥津さんは在来種の種を守り継ぐイベント「種市」を主宰するうち、岩崎さんと出会った。それをきっかけに雲仙に移住した。(撮影:繁延あずさ)

城谷耕生プロダクトデザイン展 刈水庵

城谷さんのデザインしたプロダクトを拠点とした刈水庵で展示した。作品として展示される一方で、販売も行う。小浜温泉から刈水地区に至る景色は城谷さんの作品の背景でもある。刈水庵にはエンツォ・マーリの作品をはじめ、城谷さんをつくってきたものたちも並ぶ(撮影:繁延あずさ)

城谷さんのデザインしたプロダクトを拠点とした刈水庵で展示した。作品として展示される一方で、販売も行う。小浜温泉から刈水地区に至る景色は城谷さんの作品の背景でもある。刈水庵にはエンツォ・マーリの作品をはじめ、城谷さんをつくってきたものたちも並ぶ(撮影:繁延あずさ)

種を蒔く演奏会

ミュージシャンのharuka nakamuraさんが雲仙にある岩崎さんの畑を訪れ、そこで得たものを即興で曲にするという試み。小浜に新しくオープンしたレストラン「BEARD」で無観客演奏を行なった。映像作品としてアーカイブされている。「BEARD」の原川さんは中目黒で独特の料理と空間を供して話題を呼んでいたが、岩崎さんの野菜に惹かれて雲仙に移転した。(撮影:大沼ショージ)

ミュージシャンのharuka nakamuraさんが雲仙にある岩崎さんの畑を訪れ、そこで得たものを即興で曲にするという試み。小浜に新しくオープンしたレストラン「BEARD」で無観客演奏を行なった。映像作品としてアーカイブされている。「BEARD」の原川さんは中目黒で独特の料理と空間を供して話題を呼んでいたが、岩崎さんの野菜に惹かれて雲仙に移転した。(撮影:大沼ショージ)