5)産地を仲間と変える
いま産地や伝統産業に関心をもつ若者は増えているといわれる。それに呼応して、兵庫県西脇市のように若手人材を集めるべくデザイナー育成制度をつくり、環境を整備し始めたところも出ている。日本の産地が生き残るためには高付加価値なテキスタイルやプロダクトを発信できるかどうかにかかっており、若手育成は急務だ。
しかし、既存のやり方から抜け出せない古い体質、希望と現実のギャップが埋められないなど、若者たちが生き生きと働くには課題も多い。
宮浦と小島はそれぞれの立場から、その課題に取り組んでいる。宮浦は学校を通して仲間づくりをおこない、新しい動きをおこそうとしているし、小島はNINOWやションヘル織機研究部を企画して、同志と悩みを相談したり助け合ったりするネットワークをつくってきた。
印象深かったのは、既存のシステムや上の世代をあてにせず、同世代の同志を集めてネットワークをつくり、ともに理想を語ったり、互いを高め合う姿勢である。それは彼ら独自の個性なのか、それとも世代に共通する価値観なのだろうか。それを考えるために、今度はファッションの現場を見てみたい。
株式会社 糸編
http://ito-hen.com/
産地の学校
http://sanchinogacco.com/
terihaeru
www.terihaeru.com
NINOW
https://www.ninow-textile.com/
取材・文:成実弘至(なるみ・ひろし)
1964年生まれ。京都女子大学教授。ファッション文化、若者文化、服飾史などを研究する。著書は『20世紀ファッションの文化史―時代をつくった10人』(河出書房新社、2007年)、編著として『コスプレする社会―サブカルチャーの身体文化』(せりか書房、2009年)、『モードと身体-ファッション文化の歴史と現在』(角川書店、2003年)、共著に『JAPAN FASHION NOW』(Yale University Press、2010年)など。展覧会「感じる服 考える服」(東京オペラシティアートギャラリー、2011年)のキュレーションを手がけた。
写真:川瀬一絵(かわせ・かずえ)
島根県出雲市生まれ。島根大学教育学部、東京綜合写真専門学校卒業。2007年より写真家・池田晶紀の主宰する写真事務所「ゆかい」に所属。テーマを定めずに衝動的に写真を撮り、それらを編集しながら衝動の訳を探るような作品づくりをしている。
編集:木薮愛(きやぶ・あい)
1989年岐阜生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒業。雑誌やウェブの記事を編集・執筆するほか、コーディネーターやアートフェスティバルのPRとしても活動する。