アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#69
2019.02

スローファッション新世代

前編 テキスタイル編
4)新たなファンを生み出すために terihaeru 小島日和さん(2)

小島はさまざまなつてをたどり、自ら産地におもむいて参加メンバーを決めていった。NINOWの参加者は小島を除いて繊維会社の社員デザイナーであり、展示会の目的もビジネスの結果をあげることを掲げている。今回で3回目になるが、メディアの取材、アパレル、問屋も来て、商談が成立するなど成果をあげている。
小島自身はフリーランスのデザイナーとして愛知県・一宮市内でションヘル織機を学びながら、デザイン活動をしている。ションヘル織機は尾州にあるダブル幅が織れる古い機械で、最新の織機ではできない、独自の風合いの布をつくることができる。若い同志たちと織機の使い方を学ぶ「ションヘル織機研究部」を立ちあげた。

———伝承していきたいというか、ブランドづけと思っているんです。同じ機械で同じ糸を使っていたらどこでも同じですよね。でもションヘルだと全然違うんです。同じ糸でも風合いが変わってくる。ほかにない機械だし、値段を高くつけやすい。あと、自分のつくりたい生地がションヘルでしか織れないっていうのもあります。

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小島が拠点を構える愛知県一宮市の工場にて。最多6色・6素材を織ることができるションヘル織機を使用している

小島さんが拠点を構える愛知県一宮市の工場にて。最多6色・6素材を織ることができるションヘル織機を使用している

———わたしのデザインには毎回テーマがあって、ケーキとか、ファンタジックな要素とか、抽象的なものもあるんですけど分かりやすいモチーフを心がけています。次は刺身をテーマにしようかなって思っています(笑)。「えー! なにそれ! 刺身の生地!?」みたいな。
一般の方って生地そのものに興味がないので、面白くしたいなっていうのもあって。尾州織とか言われてもよく分からない。それを刺身のマグロとかにするだけで「えー!?」ってなるじゃないですか。そのときに「これって愛知県でつくってるんだ」とか「こんなテーマだけど意外と複雑なんだ」とか発見してもらう。入り方はなるべく入りやすく、誰にでも興味を持ってもらえるようにする。奥に進んでみるとめちゃめちゃコアな世界に入っていく。そういうのがファンになる要素なんじゃないかなって思っています。

小島のつくるテキスタイルは遊び心があり個性が立っているが、まだ自分の表現を模索しているようでもある。彼女が産地の同世代のつくり手と切磋琢磨しながら、どんなものづくりをしていくのか、楽しみである。

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「terihaeru」のテキスタイルにはユニークな名前がつけられている / 「terihaeru」のテキスタイルから生まれた生活雑貨

terihaeruのテキスタイルにはユニークな名前がつけられている / terihaeruのテキスタイルから生まれた生活雑貨