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アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#69
2019.02

スローファッション新世代

前編 テキスタイル編
3)若手テキスタイルデザイナーの合同展示 terihaeru 小島日和さん(1)

2018年10月、若いテキスタイルデザイナーたちの合同展示会「NINOW ニ・ナウ」に足を運んだ。これは4産地から若手デザイナー6人が参加し、自分たちのつくった布を展示するもので、会場の代官山ヒルサイドテラス・アネックスでは作者によるプレゼンテーションも催され、多くのファッション関係者でにぎわっていた。
この展示会を企画運営した中心人物、小島日和は若干26歳。名古屋芸術大学テキスタイルコースに在学中、自分のブランド「terihaeru」を立ちあげ、卒業と同時にデザイナー活動に入っている。学生時代、一宮地場産業ファッションデザインセンターの産学協同プロジェクトに参加、機屋とともにテキスタイルをつくるなかで、産地の問題を考えるようになった。
彼女がNINOWを企画したのも、産地で働く若者たちの問題を解決したいという気持ちがあったからだ。なぜこの展示会を立ちあげたのか、一宮市にある小島のアトリエで話を聞いた。

「terihaeru」代表「NINOW」運営代表である小島日和さん。愛知県一宮市に拠点を置き、自身もテキスタイルデザイナーとして活動中

「terihaeru」代表「NINOW」運営代表である小島日和さん。愛知県一宮市に拠点を置き、自身もテキスタイルデザイナーとして活動中

———産地に入った自分の後輩や身近な人間がうつ病になって辞めてしまうっていう悲しい出来事がありました。いろいろ聞くと、企画職で入社して「期待してるぞ」みたいに言われたにもかかわらず、実際はずっと企画をやらせてもらえないっていう状況があったんですね。
生地が好きで、産地に貢献したいって考えながら来ているのに、その気持ちを汲んでいない。若手のことを労働力としてしか見ていないんです。それってすごく悲しいことですよね。
若手がやりたいテキスタイルデザインを表に出した展示会をやるのがいいと思い始めました。もしそれで数字が出れば会社も「売り上げが出るんだね」って彼女たちのことを認めてくれるだろうし、社内環境が良くなって働きやすくなるんじゃないかなって。「いつもの仕事はやりますから、そのうち10%は自由なことをやらせてください」っていう感じで展示会をしたら、それだけでも救われるって思ったんです。

小島が宮浦のセコリ荘で個展をしたとき、『装苑』元編集長の片岡朋子がやって来て話すうちに、若手展示会のアイデアが気に入られ、最初は文化服装学園でやらないかという話になった。さらに片岡がミナ・ペルホネンの皆川明に紹介すると、皆川は「代官山ヒルサイドテラスでやってみない? 僕が応援するよ」と賛同、第1回目が2017年3月に開催される運びとなったという。

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2018年3月27・28日に行われた「NINOW vol.2」 会場のようす / NINOW vol.2のメンバー。産地の会社に所属し、テキスタイルのデザイン・企画をしている20代の若い女性によって、構成されている

2018年3月27・28日に行われた「NINOW vol.2」 会場のようす / NINOW vol.2のメンバー。産地の会社に所属し、テキスタイルのデザイン・企画をしている20代の若い女性によって、構成されている