アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#69
2019.02

スローファッション新世代

前編 テキスタイル編
1)テキスタイル産地を巡る4年間 糸編 宮浦晋哉さん(1)

この4年間、宮浦晋哉は日本全国のテキスタイル産地を手弁当で飛び回ってきた。彼の肩書きは「ファッションキュレーター」。月島の古民家を改装した「セコリ荘」をベースに、テキスタイルを求めるファッションデザイナーに各地の工場を紹介するコンサルタント業務をしながら、工場を取材したり、イベントを企画してきた。日本の産地を盛り上げる、それが彼の目的である。

宮浦晋哉さん。前回の取材で会ったときは、何もないところからコミュニティスペース「セコリ荘」を立ちあげたばかり。カフェとおでん屋も始め、ネットワークづくりに余念がない時期だった

宮浦晋哉さん。前回の取材で会ったときは、何もないところからコミュニティスペース「セコリ荘」を立ちあげたばかり。カフェとおでん屋も始め、ネットワークづくりに余念がない時期だった

———学生さんから産地の関係者、デザイナーさんまで、驚くぐらい毎週たくさんの方が来てくれましたね。その金土日のセコリ荘でのイベントや飲食代のおかげで、だんだん生活できるようになってきていたところだったんです。
だけど、もっと産地を訪問するのに時間を割きたいと思うようになりました。それでお店を一旦閉めて、キャンピングカーを借りて全国の産地を回ることにしたんです。ちょうど結婚した時期だったので、妻も一緒に。
その後は岡山や金沢に一時的に移住したり、名古屋芸術大学で産学連携の授業をやらせてもらったり。2014~15年は全国をフィールドワークして産地にどっぷり浸かっていました。

自分のやりたいことを迷わずに行動に移す、宮浦のフットワークの軽さがうかがわれる。しかし、自由きままに動いているように見えても「産地を活性化させるために若い世代で仕掛けていこう」というビジョンはぶれていない。彼から繊維産地の現状を聞いてみた。

———この4年間でたくさんの会社がなくなりましたね。生産を国内に戻す動きが出てきた影響で、大きいところは商売でき、小さいところは小回りが利くようになった。けど、中堅が本当に苦戦しているようすでした。
繊維企業を支えている補助金も、いつなくなってもおかしくない雰囲気です。補助金がなくなっても残っていけるしくみをつくらないといけない。ローテクで生産数が少ない、完全には機械化できないような、クラフトに近いものづくりに「世界にここにしかない」っていう日本の強みがあるんです。それを極めれば、値段が叩かれないものができる。そういうものを産地のひとたちと一緒に目指していきたい。いま急いでやらないと、っていう危機感は変わらずありますね。

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セコリ荘の外観 / コミュニティスペースとして運営しているおでんバー

セコリ荘の外観 / コミュニティスペースとして運営しているおでんバー