4)ローカルでいること、愛着を持つこと
仙台は東北で一番大きな都市で、ひともお金も集まってくる。グローバル企業の進出も進み、経済的に東京のほうを向いている。古い建物や昔ながらの光景が醸し出す情緒や雰囲気も失われてしまって、あまり個性の感じられない大都市となっているかもしれない。それでも、住まうひとにとってはかけがえのない場所なのだ。
———仙台では大資本がすごい条件で来て、老舗の商店があっさりなくなってしまうようなこともあります。そのあたりのどうしようもなさ、まちの大きさを感じて、がくっと来ることだってある。東北ローカルでいたいと個人的には思っていますが、現実は中途半端なことになっている。ネガティブなことをいったらきりがないですが、かろうじて店を10年以上も続けてこられて、仲間が居て、好きな飲み屋があって、生活がある。今からよそのまちに行ったとしても、同じような関係を一からつくろうと思ってもできないし、自分が過ごし、生きてきた時間を大事にしたいな、と思うんです。たまたま仙台だった、ということだとしても、これまでの時間の記憶が、このまちのあちこちに残っているので、その部分でみんなもつながっていると思うんですよね。
前野さんのことばがまっすぐこちらに届いてくる。愛着とは結局、自分と土地との関わりなのだろう。生まれ育った場所で自然に育つものではなく、そこに住み暮らすうちに友達ができ、好きな場所ができ、思い出ができる。そうして初めて起こる感情なのだと思う。
———Book! Book! Sendai (以下B!B!S)のようなイベントも、郷土愛などといって仙台のまちのためにやるとなったらすごくうさんくさくなりますし、逆に行政や企業を頼ってやろうとすると、方向性が異なるひとと恊働するために目的が大ざっぱになりやすい。公共性や社会的信頼などが付加され、大きな力になるので上手にやられている方もいますが、わたしは根っからのインディペンデントなので(笑)
住まう土地への愛着を持って、自分たちなりにまちに関わっていくこと。今の時代に、地方で暮らすことのリアリティであるかもしれない。 「長く暮らした街は自分の身体の一部分みたいになりますよね。気に入らないところもあるけど、愛着がある仙台に限らず、シャッター街であったり、特徴がなく、いいところを挙げにくいまちであったとしても、同じだと思う」。