アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#46
2017.03

しくみをつくり、まちを動かす

柳原照弘さんと有田・2016/ project 新たな展開
1)2016/ のデビュー1
ミラノサローネでの初公開、ライクスミュージアム・アリタハウスでの展示

オランダとの連携協定を結び、国内外のデザイナーと商品開発をすすめる。ミラノサローネで発表して、オランダの国立美術館で展示する。オランダ国王に献上し、オランダに有田の拠点をつくる。有田にプラットフォームとなる場を形成する……。
柳原さんはショルテン&バーイングスとともに、スケールの大きな構想を打ち出した。結果的に、オランダ国王への献上以外は、ほぼすべてが実現したのである。
ブランドの内容としては、デザイナーと、窯元・商社のチームで開発した400近いアイテムを「スタンダード 」「エディション」という2つのシリーズにしている。「スタンダード 」は日常的なラインで、使いやすく機能的な製品を低価格で提供し、有田焼を世界の新しい市場に広めることを目指す。一方の「エディション」は、有田に受け継がれるハイレベルな技術を駆使したコレクションライン。ともに、有田の伝統と革新的なデザインを持ち合わせたプロダクトである。

Photography Scheltens & Abbenes

アイテムのほとんどを並べる。壮観!    (photo : Scheltens & Abbenes)

そのデビューは鮮やかだった。世界的なデザインの祭典「ミラノサローネ」で、全アイテムを発表したのである。会場はミラノのなかでもシックで、伝統とモダンさが同居するブレラ地区。その中心となる展示スペースで、スタンダードとエディション全ラインのプロトタイプが並んだ。
デザイナーごと分け、大きなひとつの棚に商品を並べた展示は、シンプルながら、プロダクトの力がたしかに伝わってくる。初日から世界中のクリエイターをはじめ、予想をはるかに上回る来場者があり、高く評価されたのだった。
そのわずか5日後、ミラノの興奮も冷めやらぬうちに、オランダのアムステルダムで「展示」をスタートさせる。場所はアムステルダム国立美術館(ライクスミュージアム)。「Arita Porcelain Today」というタイトルのもと、2016/ の商品は、その由来やイメージとつながる館所蔵の絵画や陶磁器などとともに、由緒ある美術館を飾ったのだった。商品が販売に先立って美術館で展示されるという話はあまり聞いたことがない。とくに日本の伝統産業では初めてだろう。
2016/ の発信は、それだけにとどまらない。隣接する歴史的建造物を「アリタハウス アムステルダム」として、商品の展示や販売も行ったのである。ライクスでの展示は商品の一部だが、こちらではほとんどをディスプレイし、実際に使ってもらうなどして、伝統工芸をはじめ日本文化にインスパイアされたデザイナーの発想や、有田での制作過程など、商品の背景もふくめて伝えることを試みた。ライクスは4月22日から10月9日、アリタハウスは5月14日から12月末と、ともに長期間の公開で、2016/ にかけるオランダ側の熱意が伝わってくる。400年の歴史で培われた有田の技術と、オランダの高いデザイン力がともに補い合い、文化的に高め合うために、オランダと佐賀が協同する最初の一歩でもあった。

01_2016: Milano salone_Photography_Takumi Ota

02_2016: Milano salone_Photography_Takumi Ota

(上2点)ミラノサローネ (photo : Takumi Ota)

ショルテン&バーイングスの世界限定50セットの展示 (photo :  Olivier Middendorp)

05_Arita House Amsterdam garden by landscape designer Piet Oudolf_Photography Inga Powilleit のコピー

06_Arita House Amsterdam kitchen_Photography Inga Powilleit のコピー

(上2点)アリタハウス (photo:  Inga Powilleit)