アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#161
2026.10

シネマと本とパンと2 まちの「あいだ」を潤す 
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1 家具をつくる、風景をつくる  山口県萩市
4)人を引き寄せる「アナザーワールド」

忠弦さんの家具と、それを生み出すアトリエの存在は人づてに広がり、噂を聞いて全国各地から人が訪ねてくるようになった。旅人や萩で暮らす同世代の人たちが出会い、交わる場所になっていった。

知美さんも、そんなふうに中原木材へ導かれた一人だ。沖縄を旅していたときに出会った友人から、「萩へ行くなら、中原木材には絶対に行ったほうがいい」と聞いた。実際に萩を訪れ、宿泊したゲストハウス「ruco」でも同じように勧められて、アトリエを訪ねた。当時の知美さんは次なる挑戦のため、ニューヨークへ行こうと考えていた。ところが忠弦さんがつくったこの空間に衝撃を受け、「この人と一緒に何かやってみたい」と思った。それが、忠弦さんとともに歩む現在につながっている。

知美:出会った時、(忠弦さんは)上に住んでて。本当に全体的に、全部が衝撃でした。これ、コメディ映画の中に居るんかな、みたいな。それぐらい、アナザーワールドというか。その後、忠弦さんのノートを見せてもらったんですけど、すごく共感できる言葉がたくさんあって。

アトリエを訪れる人のなかには、建築やデザイン、ものづくりに携わる人も多かった。初対面でもこの空間と家具を見れば、忠弦さんが何を大切にしているのかが伝わる。

はじめから人の集まる場所をつくろうと計画したわけではない。自分の思い描く空間を一心につくっているうちに、そこに共鳴する人が現れた。その誰かが、また別の誰かを連れてくる。

価値観の近い人たちとの交わるうちに、音楽や食などのイベントを始めたのは、自然な流れかもしれない。こんなことをやってみたいという声もあがって、さまざまな催しが行われるようになった。忠弦さんの脳内を体現したような場所は、こうして展開していった。

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石を積む、窓をつくる、階段をつける。どれも相当難しいことを友人たちに助けてもらいながらやっていった。「道具があるから何でもできる。必要だなと思ったらつくるっていうのが身についちゃってる」(忠弦さん)