アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#135
2024.08

食文化を次代につなぐ 女性たちの、生きる知恵

1 津軽あかつきの会 「ばっちゃ」の原点 青森県弘前市(津軽地方)

青森県、津軽地方の南に位置する「中南津軽」地域は海からも遠く、冬には豪雪地帯となる。古くは、冬の間その土地に閉じ込められるほど積雪したという。「津軽あかつきの会」(以下、あかつきの会)は、この地域を拠点に活動する女性の集いだ。地域に伝わる家庭食を調査し、レシピに起こし、次世代へと食文化をつなげている。土地の料理をふんだんに活かした食事会をひらきながら、収益を目的とせず自主的に運営されるあかつきの会。その活動は20年を超える。かつていちど途切れかかった津軽に古くから伝わる固有の家庭料理は、いま間違いなく彼女たちの手によって紡ぎ直されている。

本特集ではこれから3回にわたり、あかつきの会の「ばっちゃ」「かっちゃ」「あっちゃ」を通じて、津軽の伝承料理をどうつなぎ、次代へと伝えているのかを見ていきたい。これは、津軽弁において、家内の女性である「おばあさん」「お母さん」「お姉さん」のことを指し、あかつきの会はこの三本柱によって構成されている。すなわち、ばっちゃが大きな方針を決め、かっちゃが料理をしゃかりきにつくり、あっちゃはともに手を動かしながらその味を舌で覚えていく。家の味を守り、伝えるための、昔の習わしだ。

初回は、あかつきの会を立ち上げた、ばっちゃ・工藤良子さんに登場していただく。「津軽富士」こと岩木山の山頂にまだ雪が残る春、工藤さんはゆっくり静かに語られた。

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