アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#105
2022.02

子どもが育つ、大人も育つ

3 「学び合う」という実験 秋田県五城目町・ものかたり

子どもをいかに育てるか。それはこの先を考えるにあたって、たいへん大きな課題だと思う。そのための「場」が全国各地にひらかれている。義務教育以前の、保育園や幼稚園。さらにはオルタナティブなスペースなど、ありかたはさまざまだ。そこでは、子どもひとりひとりの個性を育みながら、安心して居られるような場所をつくる試みが行われている。

本特集では、アーティストや企画者など、表現にかかわる人々がひらいた3つの場に着目し、それぞれの取り組みを紹介していく。なお、特集としては、2021年度の記事#100#101から始まっている。福岡県福岡市の「いふくまち保育園」「ごしょがだに保育園」と、園をひらいた酒井咲帆さんの話である。地域とじっくりと関係をむすびながら、多様に「ひらかれた」場を目指す活動がすすめられていた。
今号では、秋田県南秋田郡五城目町のギャラリー「ものかたり」を取り上げる。ものかたりは子どものための場ではない。もちろん、子どもを対象としたイベントやワークショップなどは行っているが、もっと異なる視点から「育てる、育つ」ことを試みている。
この場をひらいたのは小熊隆博さん。五城目町に生まれ育ち、関東・関西で学び、直島でのアートの仕事を経て、五城目町に戻ってきた。人口減少が続く地元で、自身のキャリアを生かして、何を試みることができるのか。小熊さんの「ものかたり」での活動をくわしくみていきたい。

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「ものかたり」は五城目町の名物通り「朝市通り」のすぐそばにある / ものかたりを中心に、周辺のお店と一緒に開催されていた展覧会「333、」 / 小熊隆博さん。埼玉の大学で学んでいたときに、美術館や博物館、学芸員などアートの世界に興味を持つようになり、その後、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の大学院に進学。修了後、瀬戸内海にある直島の「ベネッセアートサイト直島」に就職し、7年半にわたって現代アートの現場で経験を重ねた