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アネモメトリ -風の手帖-

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#57

まちを明るくする映画館
― 高知県高知市

201710月、高知市の中心市街地に新しい映画館「ウィークエンドキネマM」がオープンしました。この映画館は4年前に高知市を中心に撮影された映画『0.5ミリ』をきっかけに、監督の安藤桃子さんによって年と少しの期間限定で運営されています。
私が高校生のころには高知市の中心商店街に4箇所ほどあった映画館は少しずつ姿を消し、10年前にすべて閉館されてしまいました。今では大型ショッピングモールのシネコンで映画を見ることが当たり前となり、ミニシアターの映画は美術館ホールでの上映か、中心地から少しはずれた昔ながらの映画館がひとつだけです。
オープン当日、映画館の表では高知県内の飲食店の方によるマルシェも開催され、美味しい食べ物やお酒を楽しみながら映画の話をしている人であふれました。安藤監督のお祝いに東京から駆けつけた奥田瑛二さんや安藤さくらさんらご家族や友人で会場はまちは輝いて見えました。
日が暮れ、照明が灯されると外国の映画館のような外観にますます期待がふくらみます。劇場内には閉館になった映画館から譲り受けた深い赤色の椅子が並び、約60席と小さいながらも映画館で映画を見ることの特別感に胸が躍りました。
先日オープン前の準備中の安藤監督にお会いしたとき、「高知の人たちがちょっとびっくりしちゃうような映画とかもどんどん上映していこうと思ってる!」と周りを明るくする少しやんちゃな顔で語っていた通り、今後も自らのセレクションで少しマニアックなものから35ミリフィルムの名作の上映など、高知の地方都市ではなかなかお目にかかれない作品を映画館で見ることが出来そうで楽しみです。そして、今の高校生や若者にとってこの映画館、映画を通して音楽やファッションなどいろんな文化を知ることができる場所になることも、希望であり羨ましくもあります。
ここから始まることがたくさんある、そんな場所になることを願って。

ウィークエンドキネマM
http://www.kinemam.com/

(大賀美穂)

映画館で映画を見ることを楽しませてくれるエントランス。

映画館で映画を見ることを楽しませてくれるエントランス。

おびさんロードを明るくする映画館。

おびさんロードを明るくする映画館。