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アネモメトリ -風の手帖-

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#35

安田侃の「こころを彫る授業」
― 北海道美唄市

安田侃(やすだ・かん)彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄を知っていますか?
かつて日本有数の石炭の町だった北海道美唄市の小学校跡地をリノベーションし、同市出身の彫刻家、安田侃の作品を展示している芸術文化交流施設です。そこで不定期に開催されている人気のワークショップ、安田侃の「こころを彫る授業」に参加してきました。
10時。ワークショプは、参加者が各々好きな形の大理石を選ぶことから始まります。安田侃さんからごく簡単な説明を受け、最初はおっかなびっくり彫り始めます。彫り方は自由です。アトリエには大理石を彫るカーン、カーン、カーンという音だけが響きます。
お昼休みを挟んで、さらにひたすら彫り続けていると、突然彫るべき場所が見えてきます。イメージした場所をイメージした形にはじき飛ばすのはとても快感です。でも快感は長く続きません。なかなか思うようにはならない固い大理石。これは「こころを彫る授業」でした。大理石に向かいながら、「あ、理性だけで支配できないのは心も同じか」と気づきます
夕方16時。ほとんど大理石の形が変わらないうちにワークショプは終了です。他の人にはわからないかもしれないけれど、少しずつ大理石が形を変えていることを自分だけは知っています。ワークショップを終えた後の心地よい疲労感はスポーツ後みたいでしたそして参加者のほとんどの「こころ」は完成せず、その後はNPOスタッフが開催する月に1度のこころを彫る授業に各々のペースで参加し、ゆっくり時間をかけて心と向き合っていきます。
安田侃さんの最後の挨拶が印象的でした。「みんなは石を一生懸命見ているけれど、飛び散ったかけらこそすごく美しい形をしていたりする。ゴミとして捨てちゃったけどね(
このワークショップはとても人気があり、北海道内各地からはもちろん、本州からも多くの人が参加しています。のどかな北海道の風景とアート散策、無心になって自分の心と向き合う時間をぜひ体験してみてはいかがでしょうか。ギャラリーに併設された居心地のよいカフェもおすすめです。

安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄
www.artepiazza.jp

(姉帯美保子)

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