日曜日の早朝に、大阪メトロ(地下鉄)長堀鶴見緑地線「横堤」駅から東に10分程歩き、近畿自動車道の高架下を北へ100m程行くと、空気が変わり、目には見えない境界を越えることになります。
境界を越えるとそこは、中国(中華人民共和国)の下町です。雰囲気が本当の中国のように変わります。わずか50m程の範囲ですが、一軒の商店を中心にフリーマーケットのように商売をする人々が集まっています。境界の内側には、横浜や神戸にある「中華街」のような観光地とは異なる庶民の生活があります。
この地域には中国本土より移り住んだ人々が多く暮らしています。八角などの香辛料や調味料、揚げ油の香りが周囲に立ちこめ、聞こえるのは中国語のみです。商店に付属する露店には長蛇の行列ができています。
行列は、中国の方の朝食には定番の油条(ヨウティアオ=揚げパン)を買う人々です。油条を20本も買って帰る夫婦に話を聞くと、1週間分を買っておくとのことです。自宅で揚げないのかと質問をすると「这是家乡的味道(これは故郷の味がするんだ)」と語ってくれました。
中国のインスタントラーメンや調味料等々も売っています。値段は10年程前に比べると2~3倍になっていますが値段には関係なく売れているようです。5個入りの袋麺が800円程です。
イートインスペースもあり、豆腐脳(ドウフナオ=豆腐の中華風お吸い物)や豆乳と油条をセットで食べる人で賑わっています。付近では、中国野菜などを商いする人や、数日遅れの中国語の新聞を「免費(無料)」と言いながら配る人などもいます。
自転車で来ている方に話を聞くと、近隣の工場で働いているとのことで、日本でお金を稼いで中国で料理店を開く夢があるそうです。一方で、油条をたくさん抱えた中国人夫婦が雑踏を抜けて、トヨタの黒い高級車に乗って去っていく姿もあります。
境界の内側は、様々な想いを持って日本で暮らす中国人のオアシスとなっています。店員さんもお客さんも屈託のない笑顔で買い物を楽しんでいます。
中国語ができなくても、簡単な日本語と指差しで買い物ができます。身近でディープな境界を越える旅はいかがでしょうか。営業は毎週日曜日、早朝5時頃~9時頃のみです。
取材地住所
大阪府大東市諸福8-5-18
(中野聡史)