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アネモメトリ -風の手帖-

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#152

公園で踊ろう
― 中国・上海市

とある週末の朝8時、気温33℃を超える猛暑日、上海市内にある魯迅公園では、たくさんの中高年層が、太極拳、ヨガ体操、社交ダンスなどに勤むいつもの光景がみられました。中国では退職年齢が比較的若いため、時間に余裕のある中高年層が公園に集まり、さまざまなサークル活動を行い、日本の公園とは一味違うカオスな社交場を形成しています。
公園でのサークル活動で最も多いのはダンスです。社交ダンスのグループは、ドレスアップして踊る人も多く、屋外にダンスホールが出現したように感じます。先生がメガホンで懇切に指導する初心者クラスや、厳しいサークル活動理念を掲げるような上級者クラスもあります。また、「広場舞」と呼ばれるダンスは、おそろいのユニフォームで隊列を組み、ポップな音楽に合わせ、一糸乱れぬように踊ります。元々は健康体操でしたが、アップグレードされるようになり、芸術性を求めプロ並みの演技力を披露するグループもいます。
しかし、コロナの影響下、公園での集団によるダンスは、感染拡大の予防策として禁止されました。せっかく公園に来たのに、仲間たちと集うことができず、無言で散歩をするしかできません。公園は、中高年層の社交場の機能を失い、異常ともいえる静かな風景が続きました。
コロナ対策の成果が見られ、規制が緩和されていく過程で、ダンスを踊りたくてしょうがない人々は、規制を守りつつ再開への準備をおこないます。密を避け、3人だけで行う「広場舞」や、ペア同士が触れないよう距離をとるエア社交ダンスなど、ギリギリの規制範囲で動きはじめます。そして季節が変わり、規制が解かれると、公園には情熱の「広場舞」や社交ダンスが戻ってきました。
とある平日の夕暮れ前、徐家匯公園では、おそろいのユニフォームで行進をしながら、見事な「広場舞」を踊っているグループがいました。暗くなり始めても、何曲もダンスを踊り続けます。初心者用の簡単なダンスが始まると、日本の盆踊りのように、参加するならご自由にという具合で、ギャラリーだった人たちが自然とその列に加わります。このなんともゆるい雰囲気も魅力的です。
公園でエネルギッシュに踊り、充実した人生の余暇を過ごす中国の中高年層を見ると、パワーをもらいます。再びの青春を謳歌している様子が伺え、うらやましく思い、幸福感に満たされます。

(飯田一憲)

魯迅公園にて、社交ダンス初心者クラスの様子

魯迅公園にて、社交ダンス初心者クラスの様子

魯迅公園にて、社交ダンス上級クラスサークルの活動理念フラッグ。 ダンス大会へ向けての練習プログラムが詳細に決まっている

魯迅公園にて、社交ダンス上級クラスサークルの活動理念フラッグ。
ダンス大会へ向けての練習プログラムが詳細に決まっている

徐家匯公園にて、揃いのユニフォームで隊列を組む「広場舞」の様子

徐家匯公園にて、揃いのユニフォームで隊列を組む「広場舞」の様子