「ギャ、ギャ、」と、今日も早朝からカササギの賑やかな鳴き声が聞こえます。カラスより一回り小さく、白と黒のツートンカラーで、羽の辺りが若干青みがかっています。愛らしい外見とは裏腹のガラガラ声にギャップ萌えすること請け合いです。スズメ目カラス科のカササギは、おもにユーラシア大陸に広く分布しており、日本には豊臣秀吉による朝鮮出兵の際に持ち帰られたとされ、九州北部一帯へ定着しました。現在佐賀県では県鳥として親しまれ、佐賀県および福岡県のカササギ生息地は天然記念物に指定されているそう。
そのカササギが遠路はるばる北海道、とりわけこちら苫小牧市周辺に棲み着き始めたのは1990年代のことでした。詳しいことは判っていませんが、どうやら九州からではなく、大陸からロシア経由で渡来したという説が有力なようです。15年ほど前からは、筆者の近所の公園や遊歩道でも頻繁に姿を見かけるようになりました。時折カラスと喧嘩しつつも、日々健気に暮らしています。
さて、カササギはご周知の通り、古今東西の芸術作品のモチーフにもなってきました。西洋の作品では、ブリューゲルによる、《絞首台の上のカササギ》(図1)、あるいはロッシーニのオペラ、『泥棒かささぎ』などが知られているでしょうか。西洋では中世以来、カササギは悪魔や魔女に仕える不吉な鳥とされ、またやかましい鳴き声から、他人への陰口や悪口を暗示し、密告者の象徴とされました。一方で東洋に目を向けると、例えば韓国の朝鮮王朝時代の民画においては、吉報を告げるありがたい鳥として、しばしば虎とともに描かれました。《鵲虎図》(図2)では、民画ならではの素朴でひょうきんな描写のカササギが見受けられ、こうしたカササギの東西での対照的な捉え方は、イコノロジー的な観点としてもとても興味深いのかもしれません。
カササギはなぜ苫小牧にやって来たのか。それは吉兆なのか、はたまた凶兆なのかは謎ですが、カササギやカササギが描かれた作品を通して、あたかも時空を超えて世界と交信しているような気がして嬉しくなります。これからもそっと動向を見守っていきたいと思います。
参考
北海道カササギプロジェクト
magpie.kapiu.org
朝日新聞出版編『ブリューゲルへの招待』朝日新聞出版、2017年。
別冊太陽編集部編『韓国・朝鮮の絵画』平凡社、2008年。
(加藤 綾)