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アネモメトリ -風の手帖-

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#222

2023年2月の松山駅
― 愛媛県松山市

松山駅と周辺施設をご紹介します。
1927年に開業されたこの駅は、JR予讃線の中心的な駅として多くの人に利用されています。戦災にあったため駅舎は1953年に改築され、その後、2000年に鉄道唱歌100周年記念イベントに合わせて新装されました。特徴的な三角屋根は夏目漱石の小説『坊ちゃん』の旧制松山中学や初代松山駅をイメージしたものです。改札口付近も木目調に改修され、小説の時代背景に合わせたものになっています。自動改札機は導入されていないので、普段ICカードを利用している県外の方にとっては、改札口で駅員さんに切符を手渡す光景は新鮮に映るかもしれません。

松山駅

松山駅

改札口

改札口

松山市内を歩くと、「坊っちゃん」や「マドンナ」と冠した土産物や飲食店などを多く見かけます。施設や事業などにも「坊っちゃん」の名がつくものが多くあります。夏目漱石が『坊っちゃん』の中で「二十五万石の城下だって高の知れたものだ。こんな所に住んでご城下だなどと威張ってる人間は可哀想なものだ」と記しているのはよく取り沙汰されることですが、この小説をここまで観光に援用する行政や民間のやや複雑な寛容さ(?)にはいつも感心させられます。
松山駅は現在、再開発が進められています。地上駅のため、東西地区のアクセス性が悪く、駅周辺では踏切による通勤時の交通渋滞が日常化していることなどを受け、線路の高架化の工事が進められています。完成は2024年3月の予定でしたが、工事の設計ミスがあり、約半年ほど遅れると報道されたばかりです。駅を訪れると、周辺で高架化の工事が進められているのが分かります。高架化の他、駅舎の建設、駅前広場の整備などが計画されています。近い将来、空の広いこの駅付近の景観は大きく変わることになります。写真は2023年2月に松山駅から撮影したものです。

高架化の工事現場

高架化の工事現場

駅から歩いて10分程の場所にはJAえひめ中央の直売所「太陽市」と直営複合施設「みなとまち まってる」があります。
「太陽市」では地元で採れた野菜や果物が販売され、近隣のスーパーより安価で購入できます。この季節は柑橘コーナーも充実しています。園芸や水産品コーナーなどもあり、私はここで地元の海でとれた魚のアラをよく購入します。下処理が必要ですが、骨が付いているので、旨味のある料理をつくることができます。時間のある時には、数種類のアラを購入し、食べ比べたりします。

太陽市の外観

太陽市の外観

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太陽市の内観

太陽市の内観

同じ敷地内にある「みなとまち まってる」には「おひさま食堂」があります。入り口付近には小さな噴水があり、いつも子どもたちで賑わっています。この食堂は「太陽市」の食材が使われています。テラス席もあるので、天気の良い日は外で食べることもできます。地元の食材を購入したり食べたりすることができるので、旅行や打ち合わせ等で県外から来た方と行くと喜ばれる場所のひとつです。

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みなとまち まってるの外観

みなとまち まってるの外観

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みなとまち まってるの内観

みなとまち まってるの内観

市街地を歩いていると、観光客だと思しき方が、スマートフォンを片手に坊っちゃん列車に乗っている姿を目にします。「マッチ箱のような汽車」に乗り、道後温泉に度々足を運んでいた漱石に思いをはせながら乗ってみるのも良いかもしれません。

(牛島光太郎)