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アネモメトリ -風の手帖-

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#178

新しい玉虫塗のカタチ
― 宮城県仙台市

宮城県の伝統工芸品である、「玉虫塗(たまむしぬり)」をご存じでしょうか。
仙台市で玉虫塗の製造・販売を行われている東北工芸製作所によると、「『玉虫塗』は、艶やかに照り返す発色と光沢が特徴の、仙台生まれの漆芸です。光の加減で色合いが微妙に変わる、その豊麗な色調がタマムシの羽根に似ていることからこの名がつけられました」(1)と説明されています。
伝統的な漆芸として有名ですが、それが今日ではさまざまな日用品にその技法を応用することで進化を遂げています。
東北工芸製作所から生まれた、現代の暮らしに合った多様なシーンで気軽に使える「TOUCH CLASSIC」という玉虫塗の新しいプロダクトブランドは、従来の玉虫塗のイメージを覆す「黒」で統一されています。
私の中で「玉虫塗」といえば、赤や緑の鮮やかな漆器のイメージがあったので、これが同じ玉虫塗だとは、最初は信じられませんでした。
なぜ「黒」なのかというと、どのようなシーンにも馴染むシンプルモダンを基調としているからです。また、グラスやタンブラー、猪口などは、薄く透明度の高い松徳硝子に、宮城の山の稜線と波打つ海のイメージがグラデーションで施されており、息を飲む美しさがあります。
「TOUCH CLASSIC」は、東日本大震災後、宮城から東北を活気づけたいという思いから発足しており、暮らしの中で自然に触れられるデザインで、日常を華やかにしたいという思いが込められています。玉虫塗の「良いところ」を残しつつも時代に合わせたデザイン、世界に通用する新しい商品を作っている点に、とても感銘を受けました。
また、伝統工芸品は「鑑賞されるモノ」というイメージが根強いですが、東北工芸製作所では、「見る工芸」から「使う工芸」を根底に、贈答品や記念品、献上品など、仙台を代表する伝統工芸品を作り出してきた歴史があります。この「TOUCH CLASSIC」にも、そのものづくりの精神が受け継がれているのを感じます。
仙台市内にはショールームがあり、「TOUCH CLASSIC」だけではない、たくさんの美しい玉虫塗の商品を見ることができますので、是非ご覧になってはいかがでしょうか。
日常を華やかにする出会いがあるかもしれません。

(髙倉彩乃)


(1)
玉虫塗−東北工芸製作所
http://www.t-kogei.co.jp/tamamushinuri/

参考
東北工芸製作所
http://www.t-kogei.co.jp/

TOUCHCLASSIC
http://touchclassic.jp/

伝統的な玉虫塗の商品

伝統的な玉虫塗の商品

「TOUCH CLASSIC」の商品

「TOUCH CLASSIC」の商品