「うなぎの寝床」は、2012年に福岡県八女市に生まれた地域文化商社です。九州を中心とした伝統工芸品などを取り扱うアンテナショップとして始まりました。2015年ごろからは久留米絣の伝統的なもんぺを現代風にアレンジした、MONPEを作り始めました。これは、織元や縫製工場と共に作るオリジナル商品です。「うなぎの寝床」という名前は、MONPEを取り扱う旧丸林本家の店舗の特徴から名づけられました。
2022年4月には福岡市の大型商業施設・ららぽーと福岡店にも新店舗をオープンしました。「うなぎの寝床」代表の白水高広さんは、「新型コロナウイルスの影響で、地域のものづくりや伝統工芸品の産地の受ける打撃は大きい。都市に暮らす人々にも、地域文化の歴史や資源、つくりての文脈を組んだ『もの』を見る機会を作らなければ」という焦りを感じていたそうです。商業施設は、都市生活者や「もの」に興味のない人々とも交流しやすい場所です。福岡や九州、日本のものづくりを知ってほしいという理由で、出店を決めたそうです。
店舗のコンセプトは、生活者(つかいて)に近い場所で「つくりて」と「つかいて」双方の交流が誘発できる場所。つくりてを一覧で見られる壁面の設置や、「もの」の詳細な説明を見るためのQRコード、企画展の実施など、ただ商品を売るだけではない、地域文化を伝えるための工夫がなされています。
商品選定については、多くのつくりての活動を見てもらうことを意識しつつ、八女店の商品を絞り込んでいったそうです。
スタッフは、地域文化や「もの」が生活の中でどのように使えるかなどを来店客に伝えることを念頭に置いて接客していて、この店舗をきっかけに八女店を訪れるお客さんもいるそうです。
今回出店した大型商業施設は、福岡市青果市場の跡地に建設されました。
「うなぎの寝床」では、ある一定の土地の範囲=「地域」、人と自然(土地)が関わり合い生まれ、育まれてきた固有の習慣や環境=「文化」と定義しています(註1)。この定義に当てはめると、青果市場はまさに地域文化を担う場所でした。その跡地で生まれた「うなぎの寝床」は、これからの地域文化を考えるのにふさわしい場所だと言えるのではないでしょうか。
うなぎの寝床
https://unagino-nedoko.net/
(註1)
うなぎの寝床「地域文化って何だろう?研究会」とは?
https://unagino-nedoko.net/feature/40630/
※本記事は、うなぎの寝床代表・白水高広さんへのメールインタビューを基に構成しました。
(今長まゆみ)