前号に続き、デザイナー城谷耕生さんの仕事を見ていきたい。
城谷さんはイタリアでデザインを学んだのち、2000年に帰国。地元の雲仙市小浜にSTUDIO SHIROTANIをひらき、職人たちとともにものづくりを試みつつ、デザインの力で地域を活性化することに取り組んできた。エンツォ・マーリやアッギーレ・カスティリオーニなど、偉大なデザイナーに学んだ「社会のためにあるデザイン」を、地元や近隣地域で実践し始めたのだった。
ひとりで始めた取り組みは、彼のデザイン思想に共感する若い世代を惹きつけ、彼らとともに広がっていった。店舗デザインやグラフィックデザイン、飲食店など、さまざまなかたちで城谷さんに学んだことを生かすなかで、点と点がつながり、まちは目に見えて変わってきた。ここまで来るのに20年。時間をかけた地道な活動の成果は、少々のことでは揺るがない確かさがある。
城谷さんは2020年12月に急逝された。
STUDIO SHIROTANIのスタッフ、独立した元スタッフたちは城谷さんに学んだことを思い返しながら、自分たちのやれること、やるべきことに全力で取り組んでいる。
今回は、城谷さんがひらいた拠点「刈水庵」から、小浜のまちを眺めてみたい。まちを活性化するための最初の試みは、人を育てることにもつながっていた。刈水庵の現店長、初代と2代目店長の3人に話を聞いてみた。
風信帖