コロナ禍で、わたしたちの生活は大きく変わりました。
経済が停滞し、本誌が取り上げてきたようなものづくりや地域づくりなども、きびしい状況に置かれています。ひととひとが直に集うことも難しく、オンラインでのやりとりやネット配信が主流になってきています。
ものの流通や消費のありかたを見直さざるをえない状況のなか、わたしたちはこれからどんな生活をつくっていくことができるのでしょうか。しばらくは、これからの経済と流通のかたちを考えていきたいと思います。
今号から3回にわたって「市」を取り上げます。
市とは、ひとが集まり、ものの売買や交換がなされる場です。古来より、世界の至るところで開かれてきた、ものの流通の最も基本的な形態でもあります。今現在、中止や延期になっている市も多いですが、そのこともふくめて、ここから始めてみようと思います。
ここ数年、市は各地でさかんに開かれるようになりました。マーケット、マルシェと呼び名もいくつかありますが、大小さまざまな規模で、取り扱われる品物もヴァラエティに富み、まちおこしのツール的に使われるケースも増えました。手軽に集客ができ、収益があげられるイベント的な装置として開催されるようにもなったのです。
ビジネスとしての市が流行る一方で、市のありかたを模索するひとたちも出てきました。どんなふうにひとを集め、どんなものを、どのように流通させるのか。市はそのとき限りの場ですが、そこで生まれた関係性をいかに育んでいけるのか、発展的な試みも起こっています。
これから、市はどのように変わりうるのでしょうか。まずは、「より良いかたち」を探り続ける個人主催の市を訪ねてみました。