アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#79
2019.12

農からさぐる、地域の文化

前編 ふれあい朝市の20年 京都・大原
2)ふれあい朝市 「大原野菜」に出会う場

大原では毎週日曜日、「大原ふれあい朝市」と呼ばれる朝市が行われている。

スタートは午前6時。朝の大原は、山々に白くぼんやりとした霧がかかり、幻想的だ。大原の人々はこの霧を「小野霞(おのがすみ)」と、誇らしげに呼ぶ。寒暖差が大きい盆地ならではの現象で、この霧がもたらす朝露が、野菜たちに水分を与え、畑全体の温度を下げて、甘みを蓄えた美味しい野菜を育むのだそうだ。

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大原ふれあい朝市に出店しているのは20軒ほど。出店者は、大原または近郊の静原などに農地を持つ農家がメインで、お年寄りから移住者、農業に足を踏み入れたばかりの若者までさまざまだ。決して規模が大きいとはいえないが、野菜の他にも、鯖寿司やしば漬け、餅、お弁当などの加工品などが並び、うどんやおやきの屋台もあって、なかなか楽しめる。

早朝スタートにも関わらず、早い時間であるほど賑わっている。オープンの6時前からフライングで買い物を始めるひともいて、7時前には、売り切れてしまうものも多いようだ。9時には直売所「里の駅 大原」の旬菜市場がオープンするので、その前くらいからまたひとが増えてくる。

訪れるひとの年齢層も、若い夫婦からお年寄りまで、幅広い。人々の目的は、新鮮な野菜や手づくりの惣菜を手に入れることはもちろん、家族の早起きの理由に、観光に、サイクリングの休憩にと、いろいろある。
単価の高いレストランの料理人や、オーガニック志向の八百屋など、プロの客も多く訪れる。世界を舞台に活躍するフードアーティストや、いま人気のYouTuberといった有名人も。彼らはここで、農家の方と会話しながら、野菜にまつわるストーリーまで仕入れていく。

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写真家の水野秀比古さんは小野霞の美しさに魅せられ、朝市に仕事の撮影も兼ね、6年ほど前から通っている / 料理人の方たちも次々と訪れる / 八瀬から来た家族は、早起きした日の散歩コースに朝市を利用。市に並ぶ花や野菜を見て、季節を感じるという / 旬菜市場オープン前の長蛇の列