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アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#77
2019.10

場をつくる × クラウドファンディング

前編 京都・THEATRE E9 KYOTO

「場をつくる × クラウドファンディング」特集の後編として、2019年6月22日に京都駅の南、東九条地区に開館した劇場「THEATRE E9 KYOTO」を紹介する。
2018年4月号、5月号で紹介した前編は、映画と書店、カフェの複合施設のオープンについてレポートした。京都市左京区の商店街に誕生した「出町座」は、リノベーションの費用の一部としてクラウドファンディングで900万円以上の資金を集めた。取材に応じてくれた映画部門担当・田中誠一さんと書店部門担当・宮迫憲彦さんにとって、クラウドファンディングとは「映画を観に行く」「本屋さんで本を選ぶ」という経験を多くのひとと共有する手段であった。一方で、多くのひとからの支援を受けることは「公益性」を果たしていく責任を負うことでもあると語ってくれた。

今回紹介するTHEATRE E9 KYOTO(以下、E9)は、客席数は約100席のいわゆる小劇場である。劇場建設は、劇作家・演出家のあごうさとしをはじめとする演劇・舞台関係者が、資金の裏付けはないままに走り出した事業であった。開館までに投じた総事業費は約1億9,500万円。2回にわたるクラウドファンディングで合計3, 000万円近い資金を集め、さらに企業や個人の寄付やネーミングライツ、銀行からの融資などのあらゆる手を打ち、E9はオープンした。

資金の支援を得るとは、相手に相応の「価値」を提示することでもある。裏を返せば、支援者はE9という場を他人ごとではなく、自分ごととして捉え、「価値」を見い出したとも言える。それは、従来の文化・芸術の領域に固定された考え、行動では、引き出せなかった「価値」である。

設立と運営を主導してきたTHEATRE E9 KYOTOの芸術監督のあごうさとしと、支配人の蔭山陽太に、「お金」を軸に、文化・芸術に資金を投入する意味、地域や住民にとっての劇場、アーティストとの関係を通して、E9の「価値」が意味するものを語っていただいた。

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劇場はシェアオフィス、カフェとの複合施設としてオープン。目の前は桜並木が続き、遊歩道になっている / 建物内部の壁面には第1回目のクラウドファンディング出資者の名前が刻まれ、スポンサー名もすべて明示 / あごうさとしさん(左)と蔭山陽太さん。ふたりの驚異的なエネルギーは今なお続く

劇場はコワーキングスペース、カフェとの複合施設としてオープン。目の前は桜並木が続き、遊歩道になっている / 建物内部の壁面には第1回目のクラウドファンディング出資者の名前が刻まれ、スポンサー名もすべて明示 / あごうさとしさん(左)と蔭山陽太さん(右)。ふたりの熱意が多くの人やものごとを動かしてきた