アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#70
2019.03

スローファッション新世代

後編 ファッション編
3)東京で服を手づくりする osakentaro 長賢太郎さん(1)

長賢太郎がブランド「osakentaro」をはじめて5年になる。彼は「ここのがっこう」で居相大輝の同期生だが、デザインの方向性はかなり違う。居相は流行から離れた田舎生活がベースなのに対して、長は東京で活動し、ブランドも新宿伊勢丹やセレクトショップで販売する。彼の服には若い女性が日常生活のなかで着たくなるリアリティ、ストリート感覚がある。
長は大学時代、服飾専門学校エスモードの夜間・土曜コースに通い、首席で卒業した経歴を持つ。学校からパリ校の学費免除の資格を得たので、留学のための生活資金を蓄えながら、ブランドでアシスタントをしたり、「ここのがっこう」に通ううちに考えが変わり、自分のブランドをスタートすることにした。

1986 年生まれ。2011 年にエスモード東京校を卒業し、2014年に自身のブランド「osakentaro」をスタート

1986 年生まれ。2011 年にエスモード東京校を卒業し、2014年に自身のブランド「osakentaro」をスタート

———手づくりでやっていこうって思ったのは、nusumiguiの山杢勇馬くんの影響かもしれないですね。ちょうど居相くんがアシスタントを始めて、日本橋のアトリエでやっていた販売会へ遊びにいったんですよ。アーティストのアトリエっていいなって思っていたら、勇馬くんも自分でつくっていて、そういう仕事の仕方に憧れた。マルタン・マルジェラのコレクションってアトリエでつくっていて「つくってる感」がある。そういう「つくってる感」が大事だったのかもしれません。

マルタン・マルジェラは1990年代に活躍した伝説のデザイナー。大量生産のファッションや高価なブランドとは一線を画したアンチモードな服づくりで知られ、若い世代に大きな影響を与えた。

———僕はデザインしている時間がいちばん好き。ディテールとか絵を描いたり、パーツや生地の組み合わせを考えたり。思いついたときに誰かに頼んだら時間がかかる。思いついてすぐにかたちにできたらストレスがない。
量産のやりかたは差別化が大変だし、デザイン以外の能力が必要なんですよ。工場さんとのやりとりとか、服をつくる以外の能力が求められる。でも、そういう能力を伸ばすくらいだったら、その時間で服をつくった方がいいよなあって思っちゃう。今は本当に服をつくっているだけなので、やっていることは学生のときと変わらないし、好きなものを好きなようにつくれているからストレスはありませんね。

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裁断や縫製ができるアトリエ / 壁には、素材のサンプルやデザイン画、メモなどが無数に貼られている