3)地域との関わり1 淡路島アートセンタ—の存在
ここで、NPO法人淡路島アートセンタ—(以降aac)の活動について触れておこう。やまぐちさんは淡路島出身で京都の美術大学を卒業し、数年大阪で働いた後に、Uターン。美術作家として活動する傍ら、淡路島の中部に位置する洲本市の「洲本市民工房」立ち上げに関わり、その管理や運営をしていた。そこで作家のサポートをするうちにNPO立ち上げの必要性を感じるようになっていった。
そんなとき、2004年に淡路島を襲った台風23号で、土砂崩れのあった山のなかからぼろぼろの空家が見つかる。しかも、その空家の相続人が、やまぐちさんであることが判明する。「最初は取り壊そうと思っていたけど、それもお金がかかるし、リノベーションを事業としてNPO法人を立ち上げよう」と思ったやまぐちさんは、空家をリノベーションするためのボランティアを呼びかける。それをきっかけに集まったメンバーによって、2005年にaacが設立された。ウェブサイトにある設立趣旨には、「アート」を活動の軸にした理由がこのように書かれている。
『島』という海に囲まれた淡路島は、自然の豊かさに恵まれ、人々の生活や気質、コミュニケーションは、島固有の風土や風習に守られてきました。 私たちの島ではアートを語らなく、アートを必要とせずとも、十分に生活は豊かなものです。
橋が開通して淡路島は陸続きとなったものの、島は島のままを保っています。 行き来する自由度は増して来ましたが、まだまだ精神文化面で自由があるとは言えず、心の選択肢や、考えの自由度を増していく必要性を感じます。そうすることで、自然豊かな風土に益々、住み心地が増していくと考えます。 決して特別でも難しいものでもなく、自分の視点をもち、イメージを具体的にする手段こそ『アート』にあると考えます。