4)地域との関わり2 たしかに根づくために
さて、廃校は淡路市の所有物なので、そこを使うにあたっては地域に還元する必要があった。また、茂木さんもスイスでの経験から地域のひとたちに自分たちが何者かを知ってもらう必要を感じていた。茂木さんは市と相談しながら地域で根づくためにどんなことが必要だろうかと考えた結果、「コーヒーならアートに興味のないひとでも飲みにきてくれるのでは」と、 ノマド村でカフェを開くことを提案した。
アーティスト仲間、地元のひと、aacのメンバーたちも改装を手伝った。当時のブログには、改装中に壁塗りワークショップを開いたり、作業後にみんなでごはんを囲んだり、改装自体をひとつのイベントのようにして関わっているようすが綴られている。そのようすからは、これから淡路島にできる新しい場所で何か面白いことができるのではないかという、改装に関わるひとたちの期待や予感が感じられる。
茂木さんたちが淡路島に引っ越して4ヵ月あまりが経った2010年3月23日、無事にカフェはオープンし、オープニングイベントの「スイス祭」には長澤以外に淡路島内各所、東京や京都、大阪から総勢200名近くが来場し、大成功を収めた。オープン後はさまざまなメディアに取り上げられ、客足は順調に伸びた。
そうやって茂木さんも少しずつ淡路島での生活にも慣れ、地区の会合や掃除などに顔を出すうちに、子どもが少なくなってお年寄りばかりになる集落、増える空家、たまに移住したいという若いひとたちが現れても働く場所がないといったような課題が見えてきた。長澤でも地域の祭を担う子どもがいなくなって、ずっと続けられてきた子ども神輿が出せなくなっていた。そういった課題に直面したことで、茂木さんは外から来た自分にできることは何だろうかと気にかけるようになっていった。