アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#64
2018.09

生活と表現が育まれる土壌

前編 生活工房の日常 東京・世田谷区

21世紀になり、全国各地で芸術祭が盛んにひらかれている。「アートプロジェクト」ということばも浸透し、2020年の東京オリンピック・パラリンクピックの文化プログラムとして、ますますその数は増えていくだろう。
しかし、実は日本におけるアートプロジェクトの歴史はまだ浅い。1990年代にアーティスト主導ではじまり、芸術祭の皮切りは2000年の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」だった。ふりかえると約30年の営みである。
その間に育まれてきた事象のひとつに、生活と表現(アートを含む)の関係がある。というのも、美術館や博物館などを飛び出してまちを舞台にはじまったアートプロジェクトは、必然的にその土地の暮らしにかかわることになり、続けていくためには、やはりひとが集う「拠点」が必要になってくるからだ。
拠点での機能はいくつもあるが、その土地やそこに集う人々とともに歩んでいくためには、何よりも生活と表現の両方が自然と育まれる土壌になることが大事だと感じる。全国を見渡すと、「せんだいメディアテーク」や「山口情報芸術センター(YCAM)」、「パーラー公民館(那覇市若狭公民館)」、最近だと「都城市立図書館」(宮崎県)などの取り組みが有名だろう。
東京にも毎年さまざまな拠点が生まれているが、息の長い活動はそう多くはない。その一方で、10年以上続く活動は独自の生態系が生まれ、それを育む仕組みがつくられている。そこにはどのようなつくり手のまなざしがあるのだろうか。いま、東京にある実践を探りたいと思う。
今回は、生活と表現の場を探るために「生活工房」(世田谷区)と「小金井アートフル・アクション!」(小金井市)を訪ねることにした。それぞれ、21年目と10年目を迎える活動である。これから前編・後編の2回にわけてレポートをする。

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