5)振り返りつつ、これからを始める3
百田陶園、2016 株式会社代表取締役 百田憲由さん1
プロジェクトリーダーである百田陶園の百田憲由さんは、以前お目にかかったときと比べて、より颯爽とし、表情も輝いていた。おおらかな包容力と腰の低さは変わらないままだ。
———よかったなという安堵感はないんですよね。柳原さんといつも言うんですけど、やっとスタートラインに立てました。400年の節目を迎えて、次の10年、20年、40年をしっかり見据えていくベースができたというか。新しいこれからの500年に向かっていく道筋ができたかなと思うんですよ。
プロジェクトを振り返りながら、百田さんはあらためて、1616/ arita japan をつくり、動かしてきた結果と実績が2016/の下地になったと実感している。1616/ arita japan は助成を一切受けず、すべてのリスクを百田さんが背負い、柳原さんと手探り状態で進めたブランドだった。発表した翌年、ミラノで賞を取ってから好循環が生まれて、2016/ へとつながったのだった。
始めたばかりの2016 株式会社は、売上も決算書もない。担保になるものもないなか、ショップ開店などの資金を借り入れられたのは1616/ arita japan ゆえだ。
———1616/ arita japan は何もかも柳原くんと手探り状態でしたが、2016/ は予測がつくんですよね。一番の違いは、2016/ は即数字を残さないと会社を運営できない、というところですね。借入を億単位でしましたから、背負う期間もせいぜい1年間なんです。会社を経営しないといけないし、これだけの勝負をかけたんで、ベースが百田陶園にある1616/ arita japan のようなビジネススタイルでは、会社がもたないのはわかってるんです。
1616/ arita japan はディレクションをしっかりして、カッシーナなどのインテリアショップを中心に展開した。しかし、2016/ の場合は、もっと機動力が必要だった。けれど、百貨店はどうしても制約が多くなる。
西武・そごうに決めたのはその熱量だった。2016/ project を動かし始めたころから、バイヤーの方などが何度も有田を訪ね、人間同士のやりとりを重ねるなかで、百田さんや柳原さんと同じ目線を共有できたから、販売を託せた。最初の大々的な展示が終わってからも、良い関係が続いている。
その後は販売もさることながら、プロモーションの予定がまだぎっしりつまっている。
———西武・そごうが終わってすぐ、11月にはIFFT(東京国際家具見本市)がありまして、今は取引先も数十軒に増えました。この春から、西武各店での展開と福岡、広島、京都といろんなところでやっていきたいと考えています。ビジネス的には順調だと思います。
でも、今年はまだ投資をする年です。目先の売り上げばかり考えるのではなく、どれだけ広げられるかというところでしょうから。今年もミラノに行きますけど、5月にはニューヨークデザインの期間中に、MoMAで即売会とプロモーションが決まりました。6月はスイスのバーゼル、11月にはアートの世界的な展示イベントで一番と聞いているデザインマイアミにも出ます。スイスではエディションを中心に、2016/ のなかでも少し高めなものでやります。また、国内では6月と11月にIFFTに出すことも決まっていますから、そこでお客さんを増やしていきたいですね。
大変な数と勢いである。でもそれくらい、百田さんのなかでは2017年のプロモーションが鍵となっているのだろう。