6)小さなコミュニティを充実させる
アンドレス・カマチョ3
地域おこし協力隊の任期を終えて、独立することも考えたが、村長の「(地域の実情に詳しい人が地域をサポートする)集落支援員として、ほんまにやりたいことをやったらいいんじゃない?」という後押しもあり、2025年1月からは村の集落支援員になった。高齢者のインタビュープロジェクトなどを行っている。
律義なアンドレスさんは集落支援員として東吉野村に貢献するため、年に1〜2回はメキシコに帰り、大学で、日本について研究をしている人たちの前で東吉野村についての発表をしている。1万キロも離れていて15時間の時差があるメキシコで、日本の小さな村の存在が発表されているのだ。

そして、移住者は移住者を呼ぶ。なんとアンドレスさんの発表をきっかけにして、日本文学の研究者の友人一家がメキシコからはるばる移住してきたのだ。このときも、一家の移住を喜んで受け入れたのは村長だった。友人夫婦は地域おこし協力隊になった。一家には子どももいて、日本語が話せないため、現在アンドレスさんの妻が学校でサポートをしている。
『ときどき百姓』の最新号となる第5号では、島根県海士町の特集を組んだ。興味関心は東吉野村のみならず、「日本の小さな村やまち」へと広がっている。号により200部または300部を発行していて、今後は1年に1回発行予定だ。
アンドレス:昔の神話や文化に入っていないような伝統とか、小さな村やコミュニティのコンセプトにも興味があります。例えば、今気になっているのは高知県安芸市赤野というところです。
スーパーに行ってわざわざ遠方で育てられたトマトを買うことにも疑問を感じるんです。「自分の村でトマトを育てられるのに、どうして食べないんだろう」と。だからコミュニティのシステムにも関心があります。
他地域にも興味は広がっている一方で、自らが暮らしている東吉野村の平野地区への思いも強くなっている。「平野地区の八幡神社の神輿巡幸を復活させたい」と願っているのだ。
アンドレス:東吉野村の祭りといえば「小川祭り」が有名で、村内の集落のほとんどが対象なんですけど、平野地区は入っていないんです。平野地区では八幡神社で神輿巡幸が昔は行われていたんですが、神輿を担ぐ人数が少なくなって今はやっていません。それをみんなと一緒にもう1回やれへんかなって。子どもたちを神輿に乗せて、歩いて、太鼓を叩いたりして、みんなと一緒にシェアしたいですね。


近所の人がお詣りする、山の神の祠。奉納されるものも、すべて木でつくられている
アンドレスさんには、もう一つ夢がある。「村内でミニシアターを開き、みんなで集まって映画を観たい」という夢だ。
アンドレス:大きい映画館をつくるのは難しいけど、小さい映画館があったらいいんちゃう? みんなで集まって一緒に映画を見るのは楽しくない? と思っているんです。
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ダグラスさんは、東吉野村で坂本和之さんというアーティストに出会い、生き方が大きく変わった。村に身を置いてその魅力を享受し、創作を通じて自身の内面を充実させ、作品を積極的に発表し続けている。
一方、アンドレスさんは独自の視点で村の歴史や文化を研究し、それを雑誌やPodcast、メキシコの大学などで村外や国外に発信している。さらに、映画館をつくって、村での生活を豊かにしようともしている。
最終回となる次号では、この村のキーパーソンで、デザイナーの坂本大祐さんに話を聞き、東吉野村の10年と現在を紐解いていく。
編集者、ライター。埼玉県出身。編集プロダクション勤務を経て、2003年よりフリーランス。さまざまな女性誌を経て、東日本大震災を機に「ローカル・ソーシャル」を専門分野にし、雑誌『ソトコト』などで全国各地の取材を始める。2017年、東京から奈良へ移住。現在は、書籍制作、ローカルメディアの編集・ライティングのほか、地域のブランドにおけることばのブランディング、オンラインの編集・ライティング講座といった活動もしている。noteでは「加齢」をテーマに執筆中。https://note.com/kokuboyoshino
山形県出身、京都市在住。写真家、二児の母。夫と一緒に運営するNeki inc.のフォトグラファーとしても写真
を撮りながら、展覧会を行ったりさまざまなプロジェクトに参加している。体の内側に潜在している個人的で
密やかなものと、体の外側に表出している事柄との関わりを写真を通して観察し、記録するのが得意。 著書に
『ヨウルのラップ』(リトルモア 2011年)
http://www.naritamai.info/
https://www.neki.co.jp/
文筆家、編集者。東京にて出版社勤務の後、ロンドン滞在を経て2000年から京都在住。書籍や雑誌の執筆・
編集を中心に、アトリエ「月ノ座」を主宰し、言葉や本に関するワークショップや展示、イベントなどを行
う。編著に『辻村史朗』(imura art+books)『標本の本–京都大学総合博物館の収蔵室から』(青幻舎)限定
部数のアートブック『book ladder』など、著書に『京都でみつける骨董小もの』(河出書房新社)『京都の市
で遊ぶ』『いつもふたりで』(ともに平凡社)など、共著書に『住み直す』(文藝春秋)『京都を包む紙』(アノ
ニマ・スタジオ)など多数。青幻舎のサイトにて『女性と工芸 1900-1945』連載中。滋賀県陶芸の森評議員。
2012年から2020年まで京都造形芸術大学専任教員。
https://note.com/seigensha/m/m03df2469f0f4


