今号から3回にわたって、山で育まれてきた古来の文化や風習を現在と切りむすぶ活動を取り上げたい。
いうまでもなく、人は自然の一部として存在している。しかし、現代の都市生活は自然から切り離され、当たり前にあった古来の知恵も遠くなってしまった。生き物としての感覚も鈍くなる一方だ。現代に合ったかたちで、知恵を取り戻し、生かし直していくにはどうしたらよいのか。それを「山伏」という存在から試みる人がいる。
山を介して「芸術の根源」を炙り出すべく活動を行っている、坂本大三郎さんだ。1975年、千葉県生まれ。2013年からは山形県の出羽三山を拠点にしながら、各地に伝わる古来の日本文化やそこに根ざした人々の生活を探求し、それをさまざまな表現でアウトプットしている。アーティストとして国内外のアートフェスティバルに招聘されるなど、その活動は多彩だ。
山伏の修行にはじまり、各地のリサーチを続けるなか、坂本さんは何を見て、感じ、それら体験をどうアウトプットにつなげてきたのか。彼の活動拠点である、月山の麓のまちを訪ねた。
坂本大三郎(さかもと・だいさぶろう)
千葉県生まれ。自然と人の関わりの中で生まれた芸術や芸能の発生、民間信仰、生活技術に関心を持ち東北を拠点に活動している。著書に『山伏と僕』(リトルモア・2012)、『山伏ノート』(技術評論社・2013)、『山の神々 』(株式会社 エイアンドエフ・2019)等。芸術家として、山形ビエンナーレ(2014、2016)、瀬戸内国際芸術祭(2016)、札幌モエレ沼公園ガラスのピラミッドギャラリー『ホーリーマウンテンズ展』(2016)、石巻リボーンアート・フェスティバル(2020、2022)、奥大和MINDTRAIL(2021)、ドクメンタ15(ドイツ、2022)等に参加。
- 1)絵とゲーム 好きなことに熱中する
- 2)サブカルチャーから山伏へ
- 3)体験と知識と 山々を歩き、山を読む
- 4)アーティストとして、太古を現代につなぐ
- 5)よくわからないけど、「何か」ある 未来への手紙