「育つ環境をととのえる」ことを実践するNPO法人SOMAと代表の生態学者・瀬戸昌宣(まさのり)さん。ここまで、現在の活動「山結び」を3回にわたって取り上げてきた。今回は番外編として、行動学者の細馬宏通さんと瀬戸さんの対話をお届けする。
細馬さんには2017年、2回にわたって、じっくりお話を伺っている。題して「横道と観察」(#51、#52)。好奇心の赴くままに、ものごとを子細に観察して考えつづけ、アウトプットしていく。その過程は一本道ではなく、横道に逸れることも多々ある。守備範囲はかなり広く、人間の行動はもちろんのこと、映像、音楽、マンガ、絵葉書などのメディア全般にわたっている。
今回、細馬さんに対談をオファーしたところ、「せっかくなら山に入って歩きながら、っていうのはどう?」と提案していただいた。まさに、願ったり叶ったり。体感を通して生まれる対話は、人と自然のかかわりについて、また違う角度から照らし出してくれると思った。
東京に住む細馬さんと、福岡に住む瀬戸さんの間をとって、京都市左京区の善気山に登ることにした。東山三十六峰のひとつで、低山ながら植生が豊かな山だ。頂上からは、五山の送り火で知られる大文字山の大の字が臨める。
対話は山を歩きながら、山を下りた後は本のある部屋で。2人の会話は行きつ戻りつ、あちらこちらに飛びながら進んでいった。
みたもの、体感したことをどう捉えるのか。そして、そこから思考をどのようにふくらませていくのか。しなやかな発想の過程を記録する。
風信帖