6)それぞれの納得が重なる先に 千年の点の打ちかた
8年を常滑で過ごして、高橋さんはこの土地の可能性に確信を持っている。
———去年か一昨年くらいに、「10年が一区切りだ」と思うのは止めました。もっといけるな、っていうか。自分の理解できることも増えて周りをよく見渡したときに、「どの場所にも可能性がある」と感じて。福祉の領域に関してもそうだし、窯業側でいろいろやっているのもそうだし。もっといけるし、もっと広げられるし伝えられる、と。自分が納得できるところまでやってみるっていう。
だから着地点は自分の実感で、「ある種完結したな」って思えるところ。他者からの評価に左右されるのではなく、マイペースですよね。そういう意味でいうと、まだ全然スタートラインな感じがするんです。可能性に確信を持てているっていうくらい。
着実に、自分の納得できるところまで。
じっくり取り組むかまえには、福祉の仕事を通して、異なる時間軸を体感するようになったことも反映されている。
そして、そのスタンスは高橋さんだけでなく、作家の鯉江明さんなどにも共通している。すぐに成果が上がらないことは、ビジネスには変換しづらく、お金が出ていくことも多い。しかし、そうでなければ到達できないこともある。
千年近い常滑焼の歴史のなかで、新たな点を打つとはそういうことだと思う。
誰もが集えるTSUNE ZUNEの次なる展開、焼きものと福祉が交差するかじまの新スペース、ものを等価でみせる高橋さんのギャラリー。また、子どもに茶碗をつくるプロジェクトを行う山源陶苑の鯉江優次さんは、近いうちに食堂を始めるのだという。
常滑焼の生み直しと、土を軸にしたコミュニケーション。数多くの試行錯誤も経ながら、それぞれの納得が重なる先で、常滑の歴史に点は打たれる。それはきっと、すでに始まっている。