コラム INAXライブミュージアム 土・どろんこ館
最後に、INAXライブミュージアムとワークセンターかじまが協働しているどろだんごワークショップの話を。
INAXライブミュージアムは、株式会社LIXILが開設する文化施設。煉瓦造の煙突をランドマークに、大正時代の土管工場を保存・公開する「窯のある広場・資料館」「世界のタイル博物館」「建築陶器のはじまり館」「土・どろんこ館」「陶楽工房」「やきもの工房」の6館からなる。貴重なコレクションの公開から、誰もが参加できるワークショップの開催まで、土と焼きものの歴史や文化を伝え、身近に感じられる、厚みのある活動を行っている。
そのうち、かじまと関係するのは、土・どろんこ館での体験教室「光るどろだんごづくり」。焼きもの用の粘土と道具を使った、60分の楽しい時間だ。館ができて以来のヒット企画だが、広報を担当する竹内綾さんによると、TikTokで紹介されたこともあり、ここ最近は平日も大人気だという。
———人気のあまり、どろだんごが足りなくなると、無理をお願いしてかじまの方につくってもらうことがあります。なかなかかじまさんのような良い形にはならないんです。かじまさんの方たちは土を扱い慣れていらっしゃるから、あらためてありがたさを感じていますね。ご近所さんであることも助かります。
水分含んだ粘土の「タネ」を真ん丸になるように削り、化粧泥を塗って色をのせ、瓶の口で磨いて光る球体をつくっていく。焼きものの粘土は粒子が細かく平べったいので、押さえつけているとよく光るようになる。焼きもの粘土ならではのものづくりだ。
———粘土から完全に水分が抜けるまで2週間くらいです。体験教室でつくったものを持ち帰ってもらって、「おはようころころ おやすみころころ」と言っているんですが、朝晩、手のひらで転がすことで乾燥を繰り返します。そうやって2週間手入れすることでさらに光るようになるんです。
かじまの利用者がつくったタネが、全国に、世界に旅立ち、光る球になる。土から始まる無数の光は、今の常滑らしい発信にも思える。
文筆家、編集者。東京にて出版社勤務の後、ロンドン滞在を経て2000年から京都在住。書籍や雑誌の執筆・編集を中心に、アトリエ「月ノ座」を主宰し、展示やイベント、文章表現や編集、製本のワークショップなども行う。編著に『辻村史朗』(imura art+books)『標本の本–京都大学総合博物館の収蔵室から』(青幻舎)限定部数のアートブック『book ladder』など、著書に『京都でみつける骨董小もの』(河出書房新社)『京都の市で遊ぶ』『いつもふたりで』(ともに平凡社)など、共著書に『住み直す』(文藝春秋)『京都を包む紙』(アノニマ・スタジオ)など多数。2012年から2020年まで京都造形芸術大学専任教員。
1976年京都府生まれ。立命館大学卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。クライアントワーク以外に、人々のポートレートや、森、草花など、自然の撮影を通して、人や自然、写真と向き合いながら作品制作を行っている。https://www.instagram.com/tamamitsukui/
1973年東京都生まれ。京都在住。会社勤務を経て2013年よりフリーランス編集・ライター。主に地域や衣食住、ものづくりに関わる雑誌、WEBサイト等で企画・編集・執筆を行う。編著に『たくましくて美しい糞虫図鑑』『たくましくて美しいウニと共生生物図鑑』(創元社)『小菅幸子 陶器の小さなブローチ』(風土社)など。