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#247

シラバスが泣いている
― 早川克美

シラバスが泣いている

(2017.12.24公開)

12月は担当教科「芸術教養講義1」の採点がある。毎回180〜270名ほどの学生の方々のレポートを読むこととなる。量は多いが、レポートを読むことはとても楽しみだ。みなさんの思考プロセスに出会えることが喜びである。

しかしながら、面白いように(ちっとも面白くないのだが)毎回、2割近くの方が課題の設問に正しく答えられていない。そして1割の方は救い出す点が見いだせないため、残念ながら不合格となる。私の授業の課題は調べ学習ではなく、自らが答えを発見し、考察する点に特徴がある。そのために一定のプロセスを踏むことが求められる。大変自由度が高いかわりに、正解はない。それなのに不合格とはどういうことか。不合格もしくはギリギリの学生の方に共通することは一つだけある。

シラバスを読んでいないのだ。

目は通されたかもしれない。しかし、理解されていない。シラバスには、ご丁寧にレポートの構成(〜な流れで書いてくださいというような)まで記載している。なのに、まったく読んでいないかのようなレポートが出される。シラバスを読んでいないかどうかはレポートに明らかに表れる。ごまかしは通用しないのだ。どうしてシラバスをしっかり読まないのだろう。

シラバスは、授業の目的、到達目標、授業内容・方法、 授業計画、成績評価方法・基準等を明らかにしたもので、その授業に必要な基本的事項が整理されて掲載されている。レポートのヒントもある。私たち教員からの大切にしてほしいメッセージが込められている。掲載ボリュームも多すぎては負担になるため、最小限で最大の効果が得られるよう、情報を整理している。なお、シラバスを何度読んでもわからないことがある場合は、遠慮なく質問のメールを送っていただきたい。学生の方々のご指摘で、シラバスがよりわかりやすくなることもあるのだ。
これを読まないのは学生の方の不利益につながる。もったいないと思う。

シラバスをきちんと理解されたレポートは読んでいて素直にうれしい。学習の目的に沿って、取り組んで欲しい部分に時間をかけられたことが見て取れる。学習の成果がレポートに表現されている。そうなのだ、シラバスを読まないことは、学習の成果を自分のものにできないことなのだ。せっかく捻出した時間をかけた学習が身にならないなんて、残念ではないか。

シラバスが泣いている。教員も泣いている。

一にシラバス、二にシラバス、授業の前後、途中にはシラバス。
シラバスを読んで欲しい。シラバスを理解して欲しい。そして、課題に沿ったレポートを書き上げた達成感をすべての学生の方に味わっていただきたい。