日々、いたるところで何らかの問題が起こって、それを解決しようという動きが起こる。その解決に対するアプローチ、2つを比較してみたい。
一つは、正解を予め定め、それに向かって解決しようとする直線的なアプローチだ。ターゲットが明確な場合に有効でスピーディな解決を可能とする。しかし、現代の問題は、様々な事象が関係しあって起こっていることが多いため、直線的に考えていては解決しづらい時代になっている。常に越境を意識して統合的な視座が求められている今、直線的アプローチには限界があるといえる。
もう一つのアプローチ、らせん思考をみていこう。らせん的なものの考え方というのは、ある問題に対し、果たしてそれが本当の問題なのかという問いから始まる。見えている問題ではなく、もっと潜在的な問題があるのではないかということを解きほぐすところからスタートするのだ。最初の問題を解きほぐした後、今度は照準を合わせて絞り込むという段階があり、ようやく解決すべき問題を定義することができる。そして、定義した問題に対する解決策を実際に視覚化していく。視覚化した解決策をシミュレーションし、また問題に立ち返って、果たしてその解決策が問題に正しく答えているか検証するという作業を、ループを描きながらくりかえす。同じところに戻るのではなく、少しずつ精度を高めて、3次元のらせんのようにくりかえすプロセスが、らせん思考である。問いを立て、仮説をもって検証し、またもう一度戻って問いを検証し、再度仮説を立てて検証するという「らせん思考」は、デザインのプロセス、デザイン思考そのものだといえる。
直線的なアプローチだと、途中で落としたアイデアは、検証の機会のないままチャンスを失ってしまうし、共創の過程における摩擦が起こりにくいため、革新的な結論を導くのは難しい。一方で、らせん思考のアプローチは、そのプロセスを繰り返していくことで、何度もアイデアの検証が実施され、プロジェクトに参加しているメンバーの摩擦を乗り越えた先の意識共有が図れるという側面もある。昔は非常に大きなプロジェクトも、少人数でやっていたりしたが、複雑な問題をたくさん抱えている今日、少人数でやるプロジェクトは少ない。様々なスキルを持ったメンバーで構成しないと解決できないことが多い中で、意識共有を図りながら組み立てていくというらせん思考のプロセスは、多様な関係を形成し、共創の可能性を拡張するための基本的なフォーマットだといえる。