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アネモメトリ -風の手帖-

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今年は「横浜トリエンナーレ」の開催年です。2001年にはじまった横浜トリエンナーレも今年で五回めを迎え、国際芸術祭としてひろく認知されるようになりました。また、2000年以降、日本ではさまざまな都市でトリエンナーレやビエンナーレが開催されるようになり、国際的な現代アートの祭典というもの自体がひとつの地位を獲得したと言えるでしょう。このような潮流のなかで、開催地の文化的あるいは地理的な特徴を活かし、地域内の複数の施設で同時に展覧会やイベントがおこなわれる芸術祭が、地域活性化事業との結びつきを見せるようになったのは当然のことかも知れません。今回は、芸術を通して地域の価値を再発見、あるいは新たな価値を生みだし、それに基づいて地域をデザインする芸術祭のウェブサイトをいくつか紹介したいと思います。

-横浜トリエンナーレ
http://www.yokohamatriennale.jp/index.html

日本で開催される国際芸術祭のうち、もっともよく知られ、注目を集めるのが横浜トリエンナーレです。首都圏であることや手頃な会場が集まっていることといった利便性はさることながら、明治以降国際的な場として機能してきた土地である横浜は、文化事業としての国際芸術祭の開催地として相応しいといえるでしょう。実際、横浜トリエンナーレ開催の背景には、外務省による国際美術展定期開催方針や文化庁の「国際芸術フェスティバル支援事業」といった政策があります。また、この芸術祭は多くのボランティアによっても支えられています。芸術祭への多様な参加のひとつとしてのボランティア活動に着目すると、一観客として訪れるのとは異なる側面が見えてくるかも知れません。

-越後妻有 大地の芸術祭の里
http://www.echigo-tsumari.jp/

つぎに、横浜トリエンナーレとは地理的な特徴をまったく異にする「越後妻有 大地の芸術祭」を見てみましょう。大地の芸術祭(越後妻有アートトリエンナーレ)は、2000年に始まった国際芸術祭です。新潟は越後妻有の里山を活かしたこの芸術祭は、都市や中央への集中あるいは合理化にたいするアンチテーゼを提出することを方針とし、およそ200ある集落に作品を分散させて展示し、あえて非効率化を図るという面白い試みをしています。また、農村の高齢者と都会の若者の交流も視野にいれ、都会からのボランティア(こへび隊)を積極的に募っています。これらの試みからは、地位活性化事業のひとつとしての国際芸術祭という側面が見えてくることでしょう。
同様に地域の特徴を活かした国際芸術祭としては、北九州国際ビエンナーレ(http://a-i-k.jp/)が挙げられます。そこでは「移民IMIN」をテーマとし、歴史的に交流の深い韓国や、ベルリン、シンガポールとの交流、提携がなされています。

-ヴェネチア・ビエンナーレ【イタリア語・英語】
http://www.labiennale.org/it/biennale/index.html

国際芸術祭について考えるときに見落としてはならないのは、なんと言ってもヴェネチア・ビエンナーレでしょう。1895年に始まったこの歴史あるビエンナーレは、来年には第56回を迎えます。また、現代美術だけでなく建築や演劇、音楽、ダンス、映画といったさまざまな部門があることからも、その影響力の大きさが伺えます。過去のビエンナーレの記録はASACという施設(サイト内のArchivio Storico)に集められていますが、その一部をHome→Arte→Archivioから閲覧することができます。

歴史ある国際芸術祭のひとつに、サンパウロ・ビエンナーレ(http://www.bienal.org.br/)を挙げることができます。ウェブサイトにおける記録や報告の蓄積は残念ながらあまり充実していませんが、Blog記事を参照することでその概要を伺い知ることができます。ほかにも、すべてのプログラムに無料で参加することのできるシドニー・ビエンナーレ(http://www.biennaleofsydney.com.au/)や、写真に特化した大邱フォト・ビエンナーレ(http://daeguphoto.com/)など、同じ国際芸術祭でもその特徴や目的はさまざまで、地域とのつながり方にもいろいろなかたちがあります。実際に国際芸術祭へ足を運ぶのも楽しいですが、ウェブページなどを通じてその全体像、周囲とのつながり、ほかの芸術祭との違いなどを把握することで、より広い視野から芸術について考える足がかりとなるでしょう。

(井岡詩子)