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アネモメトリ -風の手帖-

風信帖 各地の出来事から出版レビュー

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#75

なぜかわからないけど、そこにある町のシンボル ―尾道城―
― 広島県尾道市

尾道の町は「昭和レトロ」と言われることが多いのですが、観光客の増加にともない、それも徐々に変化しています。
JR尾道駅から続く、全長約2キロの商店街では、毎月のように新しいお店が開店し、その勢いは夜の繁華街である「新開(しんがい)」にまで及んでいます。市の助成金を利用し、空き店舗を使ったクロワッサンの店や喫茶店ができ、平日の昼間にも行列が出来ています。
また、公共施設も、市役所の建て替え、公会堂の解体、JR尾道駅の新築工事……とスクラップ&ビルドが続き、町全体が新しい流れに押されているようです。
そんななか、「尾道城解体」のニュースは市民にとって、最も時代の流れを肌で感じたニュースだったかもしれません。
尾道城とは、JR尾道駅の裏手にある千光寺山の頂上西角にへばりつく、ちょっと素っ頓狂な存在の城で、教科書に載るような意味の歴史的価値は全くない、鉄筋コンクリート3階建ての城です。この城は、1964年に地元経済人が私設博物館として建設したもので、かつては武具やピラニアなどを展示、90年代に入ってからは無人の「古城」となっていました。
尾道市は2019年に開港850年を迎える港町であり、かつて商都として栄えた町ですが、尾道駅の背後に見えるこの城が、観光で訪れる人に城下町であったような誤解を与えかねないと、以前からその存在を懸念する声がありました。また、市民からも、「地震があったら崩れるのではないか」という声はよく聞かれました。
しかし、いざ解体が決まると、まあるい山の上に転がり落ちそうな城がある風景に見慣れていて、寂しくなるとの声も聞こえます。このように「なぜかわからないけど、そこにある町のシンボル」を多くの住民が眺めながら暮らしてきたことが、尾道の町の面白さを表現しているようにも思えてきます。市は、「尾道城址」に展望デッキを作る予定です。観光化の波はしばらく続きそうです。

teduka

建設中のJR尾道駅と「尾道城」。

建設中のJR尾道駅と「尾道城」

尾道水道を一望できる場所に建っている。

尾道水道を一望できる場所に建っている

その存在はまるで千光寺山の一部のよう。

その存在はまるで千光寺山の一部のよう