もともと興味のある事柄を調べるために、インターネットの検索機能はたいへん便利です。しかし、特定の検索ワードのみで情報収集を続けていると、得られる情報の範囲が自然と偏ってきてしまうような印象を覚えることはありませんか? そのような悩みを解消するために今回は、最新の情報を幅広く扱うものであるニュースサイトをいくつかご紹介したいと思います。インターネット上のニュースサイトの魅力はなんと言っても、綺麗なカラー図版が多く掲載されていることでしょう。紙媒体に印刷する必要のある新聞紙に比べると、スペースや図版に対する制約が圧倒的に少ないので、そのぶん自由な紙面づくりがなされているのです。
-CINRA.NET
http://www.cinra.net/news
ひとつめは、国内のカルチャーニュースサイト、CINRA(シンラ)です。アート、デザイン、音楽、演劇や映画をはじめとし、エンターテイメント情報も豊富に発信されています。このサイトの魅力は、なんといってもその対象とする範囲の幅広さでしょう。ホーム画面は芸術祭のニュースのとなりにJ-POPアイドルの写真が並ぶといった具合で、これまで敷居が高いように感じていたジャンルを身近に感じることができるかも知れません。もちろん「アート・デザイン」、「演劇・舞台」、「書籍」などのジャンルごとに記事を閲覧することもできます。また、ニュースだけでなくアーティストへのインタビュー記事、コラムの連載も充実しています。とくにインタビューは個人サイトではなかなか実現できないものなので、貴重な情報源になるでしょう。
-ハフィントン・ポスト紙 合衆国版(ARTS & CULTURE)
http://www.huffingtonpost.com/arts/
つぎに、2005年にアメリカで開設されたリベラル系インターネット新聞のARTS & CULTURE欄を見てみましょう。同紙は現在、日本版やフランス版、ブラジル版など、11か国で展開されています。残念ながら日本版には文化・芸術欄はありませんが、例えば「アート」で検索してみると記事が多数ヒットします。さて、合衆国版のARTS & CULTURE欄には、「絵画」や「映画」、「写真」などの基本的なジャンルのほかに、「女性作家」や「芸術と科学」といった少し変わったジャンルも設けられています。また、「イメージブログ」のページではそれぞれ一枚の図版で現代アートの作家と作品が多数紹介されており、現在活躍している作家たちを広く知ることができます。
以上のふたつのウェブサイトはインターネット上でのみ表現活動を展開するものですが、新聞社や通信社が提供するウェブサイトも参考になります。残念ながら、有料の会員登録が必要なものや図書館や大学のネットワークを通じてでしかアクセスできないものが多いので、利用できる環境や機会を活かすようにしましょう。ちなみに、英語で読むことのできる新聞社、通信社によるニュースサイトはつぎのサイトにまとめられているので参考にしてみてください。
-「英語とパソコンWEB」サイト内、「英字新聞・ニュース雑誌サイト リンク集」
http://english-and-paso.com/material/news-paper
また、図書館や大学のネットワークでのみ利用可能なサービスなのですが、朝日新聞社が提供する「聞蔵IIビジュアル」(http://database.asahi.com/library2/)というデータベースを挙げておきたいと思います。そこでは、1879年から1989年までの朝日新聞縮約版、朝日新聞に掲載された歴史写真などの歴史的史料を閲覧することができます。日本美術や生活に関する言説を拾うのにたいへん便利です。
調査を進めていくうえでは必要な情報を集中的にあつめることも重要ですが、ときには視野を広げて、幅広い情報に触れることも大切です。そうすることで、新しい興味の対象を見つけられるだけでなく、これまで調べてきたことをより大きな文脈のなかに置いて考察することができるようになります。ぜひ積極的にさまざまな情報に触れてみてください。
(井岡詩子)