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アネモメトリ -風の手帖-

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#145

城山公園の「雑音」
― 愛媛県松山市

2020年4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、東京や大阪など7県を対象に緊急事態宣言が発出されました。416日には対象が全国に拡大され、私の住む愛媛県もその対象となりました。
この時、愛媛県は感染者や感染経路が特定できないケースが急増している状況ではありませんでしたが、他県と同様、不要不急の外出自粛の要請がありました。
天気の良い4月の日曜日の午後、日用品を買いに外出した時、城山公園を通りました。
城山公園は、松山城本丸を眺望できる広大な敷地の公園です。普段は散歩やマラソン、ピクニックなど、多くの人で賑わうのですが、この日は散歩をしている人が数名いたくらいでした。毎年、花見客で賑わう敷地内の「さくら広場」と呼ばれるエリアも、この日は閑散としていました。
早朝のような静けさと午後の強い日差しが身体的になかなか結び付かず、何ともおさまりの悪い心地でした。
松山城天守の観覧やロープウェイの運行は415日から臨時休業となっていますが、城の周りは散歩することができました。城の周りをゆっくりと歩いていると、石垣にニホントカゲがいました。よく見ると、日当たりの良い場所に数匹見つけることができます。
捕まえてよく見ると、不思議な魅力を持った生き物です。
フランスでは、何も問題がない状況を「トカゲはいない」と表現することがあるそうです。音楽業界の隠語で、レコーディング中の雑音を「トカゲ」と呼んでいたことから派生した表現らしいです。
新型コロナウイルスを「雑音」と例えるには、あまりに軽過ぎますが、可視化できずどこにでも存在し得るところは似ているかもしれません。古い音源が好きな者としては、あの雑音こそが良いのですが、このウイルスを好きになる日はこないでしょう。
とはいえ、これから先、私たちはこのウイルスと共に生きていかなければなりません。
これまでの習慣が制限されたり、場合によっては手放さなければいけなくなるかもしれません。人と人との接触を避けながら、どのように人的交流ができるかを柔軟に考えていくしかなさそうです。
捕まえたトカゲは自宅で飼育することにしました。
家族が1人増えたような気持ちです。

(牛島光太郎)

城山公園

城山公園

松山城の登城道

松山城の登城道

松山城の石垣

松山城の石垣

ニホントカゲ

ニホントカゲ