金魚とお城で有名な奈良県大和郡山市。城下町にあるどこか懐かしい佇まいの商店街の外れに、「とほん」という名の小さな本屋さんがあります。お店の中に入ると、店主がおすすめする本しか並べられていない書棚、地元の作家さんの手による雑貨、そして可愛らしい金魚! が出迎えてくれて、ついつい時間を忘れて過ごしてしまう素敵な本屋さんです。
店名の「とほん」には「雑貨とほん」「大和郡山とほん」「人とほん」「町とほん」など、いろいろなものごとに「と、ほん」と繋がっていけたらとの思いが込められています(そして「とほん」という言葉を辞書で引くと「ぼうぜん、ぼんやり」という意味もあるそうです)。
店主の砂川さんに、まちとお店との関わりについてお尋ねしたところ、「地元の人たちのためのいわゆる“まちの本屋さん”ではなく、このまちに来てもらうきっかけとなるような本屋さんを目指している」とのこと。その思いはお店を訪れる方々の割合にも表れていて、県外からが1/3、県内の他市からが1/3、市内の方が1/3となっているそうです。毎月のように開催されている本や雑貨、アートに関する様々なイベントや、まちの魅力やおすすめの本などの情報を発信されているWebやSNSは、このまちを訪れる人々の“旅のしおり”となっているように感じられます。
そのような“旅のしおり”の中でもおすすめは、毎年2月に開催されている「栞展」。全国各地の作家による手づくりの「しおり」が展示・販売される人気のイベントです。「栞展」で生まれた安堂真季さんの人気作品の、文庫本のページ上で金魚が泳ぐ姿が楽しめる透明写真栞は、とほんさんのHPでも販売されていますのでぜひご覧ください(文字の上を金魚が泳ぐ姿は本当に必見です!)。
私たちは本を読むことで、世界中のあらゆる国へ、過去から未来へと時代を超えて、自由に旅することができます。新型コロナウィルスの世界的流行により自宅で過ごす時間が多くなっている今、“とほん”とした旅のしおりをたよりに、心おもむくままに読書の旅に出かけてみませんか?
(中井健二)
とほん
https://www.to-hon.com/
奈良県大和郡山市柳4-28