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#140

街の書店が発信するカルチャーのかたち BOOKNERD
― 岩手県盛岡市

岩手県盛岡市は、遠くに岩手山の雄大な姿を臨み、市中には清らかな北上川と支流が交わる、自然豊かな美しい都市です。街並みには明治時代の建造物を今も残し、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。そんな景観に馴染みながら、独自の本文化を発信する1軒の書店をご紹介したいと思います。
瀟洒なロゴが配置されたガラスの扉を開くと、淡いインセンスの香りとともに、誰をも温かく迎え入れてくれる心地よい雰囲気に包まれます。「BOOKNERD」とは「本オタク」という意味で、店主がセレクトしたこだわりの本や雑貨が取り揃えられています。設えられた木棚には、和書に洋書、アートブックや雑誌、古書から新刊までジャンルもさまざま自由に並び、タイトルや装丁を眺めていくだけで好奇心がくすぐられ、期待が膨らんでゆく、本好きには堪らない空間となっています。
BOOKNERDの取り組みは、書店業の枠にだけにとらわれてはいません。書籍に関連したトークイベントや、壁面をギャラリーとして活用するなどの企画もしばしば開催され、都度ディスプレイに変化をもたせています。時には、店主が海外から買い付けてきたトートバッグや雑貨などの販売もおこなわれ、掘り出し物に出会えるチャンスもあります。とりわけ見逃せないのは、イラストレーションや写真展など、これまで盛岡では見ることのできなかった県外の新進アーティストたちの個展を招致している点です。これらは画集や写真集など書籍の繋がりから派生したものですが、書店では希と思われることでも、ここでは実現させてしまいます。ふらりと立ち寄っても、思いがけない本との出会いや、何か新しい発見があるかもしれない、そんな期待を抱かずにはいられない書店なのです。
BOOKNERDはオープン以来、決して広くはないその店舗から溢れるほど感度の高いカルチャーを発信しつづけ、本好きな盛岡っ子のみならず、県内外からも訪れる人がいるほど広く支持されています。

(成田有紀子)

BOOKNERD
http://booknerd.jp/
岩手県盛岡市紺屋町6-27 1F

BOOKNERD入口扉

BOOKNERD入口扉

さまざまな書籍や雑貨が並ぶ店内

さまざまな書籍や雑貨が並ぶ店内

この日は横山雄さんの展示がおこなわれていました

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