3年に1度開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」(以下、「大地の芸術祭」)の拠点施設の1つである、まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」(以下、農舞台)の冬のある日をご紹介します。ここは、2003年の第2回開催のタイミングに合わせて渋海川に沿って建設されました。オランダの建築家グループMVRDVが設計した建物内には、地元の食材を使用したレストラン「越後まつだい里山食堂」やギャラリー、里山の夜空を思わせる円形の囲炉裏の部屋など、ユニークなしかけが隠れていて、空間全体を楽しむことができます。「大地の芸術祭」開催期間中(7月下旬から9月中旬頃)は、来場者の休憩や昼食の場として、情報収集のスポットとして、またワークショップやダンスなどのイベントスペースとして、重要な役割を果たしています。敷地内には、芸術祭開催期間外にも公開されている、草間彌生の《花咲ける妻有》や、対岸の棚田にはイリヤ&エミリア・カバコフの《棚田》が展示されています。
《花咲ける妻有》も《棚田》も、「大地の芸術祭」のシンボル的な作品なので、会期中に実際に訪れてご覧になった方も多いと思います。緑豊かな環境の駅前や棚田の中に設置されたこれらの作品は、その場の風景と調和して美しく、訪れた多くの方が里山や棚田を背景に写真を撮っていきます。
ここでは、会期を終え、雪が降り積もる真冬の農舞台に訪れた日の様子をご紹介します。豪雪地帯であるこの地域に設置された作品は、雪の降り始める11月頃から積雪の重みによる破損を防ぐために、作品を単管パイプで支えたり、作品をブルーシートで覆ったりしています。イリヤ&エミリア・カバコフの《棚田》は、棚田から撤去され農舞台の1階に移動していました。
ホームページによると、作品の公開期間は、「4月下旬(雪どけ後順次公開)~11月初旬」とのことです。冬の間は降雪のため屋外作品のほとんどが公開休止となるようです。作品保護のためブルーシートで覆われた作品も散見されます。大雪の中で傘をさし、ブルーシートに包まれた作品を前にすると、ふと「人間は自然に内包される」という「大地の芸術祭」の基本理念が思い出されました。
「大地の芸術祭」には、季節ごとのさまざまなプログラムが用意されていて、季節によって質の異なる自然の魅力を体感できます。冬の取り組みとしては、雪あそびをテーマにしたイベントや展示、雪上での食体験やそり遊び、雪原を舞台にした花火鑑賞など、雪国ならではイベントが多数あります。
「人間は自然に内包される」という基本理念の意味するところや、ブルーシートの佇まいを見て、芸術祭の可能性について考えました。「作品を覆う青いビニールシートを見ると、今年も冬がきたんだなと感じる」と話すこの地域に住む方にお会いできたのが、ここでの滞在の重要な収穫となりました。
(牛島光太郎)
まつだい「農舞台」
http://www.echigo-tsumari.jp/facility/base/nohbutai