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アネモメトリ -風の手帖-

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#129

みてたのしむ道後温泉
― 愛媛県松山市

愛媛県松山市と聞いて、真っ先に「道後温泉」を思い浮かべる人は多いと思います。松山市の観光案内の情報誌やウェブサイトには、松山城と並び、必ずと言っていいほど紹介される愛媛県の代表的な観光地です。
道後温泉は日本三古湯の1つといわれ、約3000年もの深い歴史があります。万葉集や夏目漱石の小説など、多くの書物や文学作品の舞台にもなっています。
「有名な観光地には、地元の人はあまり行かない」というのはよく聞く話ですが、松山市に引っ越して3年目の私は、頻繁に足を運んでいます。
温泉もいいのですが、みてたのしむことができる魅力的な場所です。
道後温泉のシンボル的な外湯「道後温泉本館」は1894年に誕生した公衆浴場で、趣のある木造3階建ての建築物です。1994年には現役の公衆浴場として全国で初めて国の重要文化財に指定されました。ところが老朽化が進み、今年1月から7年をかけて大規模な保存修理工事に入っています。現在、工事の為に外観を覆い、部分営業をしています。
観光面での打撃が予測される中、その対策として松山市は2017年に「道後温泉本館」から徒歩で2~3分の場所に新たな外湯「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」を開業、さらに隣接する地元客の利用が多い「椿の湯」も改装しました。
保存修理工事中の「道後温泉本館」は、最頂部約20m、周囲100m以上ある巨大なラッピングアートで覆われています。永遠の生命や再生などの願いを込めて起用された手塚治虫の「火の鳥」のキャラクターが、ダイナミックに配置されています。松山市は、工事そのものを観光資源にするこの取り組みを「道後REBORNプロジェクト」と名付け、様々な展開をしています。
私は夕方に、この火の鳥を見渡すことができる「道後温泉 空の散歩道」をよく訪れます。ここは、道後温泉本館南側の冠山にあり、今年リニューアルオープンしたばかりです。火の鳥や道後を見渡せる絶好の場所に足湯が設置されています。夕日で空が赤くなり、少し肌寒くなった時間帯に、足湯に浸かると全身がゆっくりと温まるのが分かります。火の鳥や景色を眺めながら、数千年も前からここで身体を温めた人々に思いを巡らすのも良いかもしれません。
飛鳥時代の建築様式を取り入れた「飛鳥乃湯泉」や「椿の湯」も、訪れる時間帯によってその表情を変えます。「椿の湯」には、「道後オンセナート2018」の参加作家の淺井裕介さんの巨大な作品も展示されています。(2019107日現在)
道後で展開されるアートイベント「道後アート20192020」も開催中です。今年は、監修・アーティストとして日比野克彦さんをお招きして、約2年間に渡るプロジェクト「ひみつジャナイ基地プロジェクト」が実施されています。写真は、道後商店街アーケード内の今治タオルの専門店「伊織(道後湯之町店)」に設置されたプロジェクトの「まちなか拠点」の様子です。(2019107日現在)
松山市を訪れる機会があれば、身体的にも視覚的にもたのしむことができる道後温泉に足を運んでみてはいかがでしょう。

(牛島光太郎)

道後温泉本館

道後温泉本館

空の散歩道の足湯

空の散歩道の足湯

飛鳥乃湯泉

飛鳥乃湯泉

「ひみつジャナイ基地プロジェクト」のまちなか拠点

「ひみつジャナイ基地プロジェクト」のまちなか拠点