おはじき、チャンポン、新生姜……と聞いて、ピンときたあなたは、根っからの博多っ子か、かなりの博多通のどちらかではないでしょうか。実はすべて、「博多どんたく」「博多祇園山笠」と並んで博多三大祭りに数えられる筥崎宮の「放生会」で博多っ子の人気を集めている縁起物です。
本来「放生会」は鳥・魚を自然に帰す法会のことで、仏教の殺生戒に基づくものですが、神社での「放生会」は、720年の隼人征伐の犠牲者の霊を慰めるために大分県の宇佐神宮で始まったものが全国の八幡宮に広がったものと言われています。筥崎宮でも千年以上続く重要な神事が七日七夜にわたって執り行われ、参道一帯には数百軒の露店が立ち並ぶ九州随一の秋祭りとして親しまれてきました。ちなみに、筥崎宮の「放生会」は「ほうじょうえ」ではなく「ほうじょうや」と呼ぶのも、博多っ子のこだわりです。
縁起物の一つであるチャンポンは、息を吹き込むと音が鳴るガラスで出来た玩具で、江戸時代末期に放生会で売り出されて人気を集めました。ところが大正時代には一旦姿を消してしまい、現在のチャンポンは昭和46年に復活したものだそうです。放生会の縁起物としてのおはじきの歴史は更に新しく、昭和55年から「放生会おはじき」としてお祭りにあわせて販売されたものが人気となったものです(ちなみに、現在は人気が出すぎたために、お祭り期間の限定品としてではなく、通年で「筥崎宮おはじき」として販売されています)。由緒あるお祭りの縁起物なので、かなり古くから親しまれてきたものかと思いきや、意外と新しく作られた「伝統」であることに驚かされます。
筥崎宮の「放生会」は、神仏習合に由来するお祭りらしく、時代に合わせて様々な新しいものを取り入れてきたことで、博多の人々に愛されるお祭りとして千年以上も続いてきたのかもしれません。この古くて新しい博多っ子のエネルギーを感じることができるお祭りは、毎年9月12日から18日にかけて開催されていますので、皆さまぜひ遊びにきてください。
(中井健二)