神戸・新開地に喜楽館(きらくかん)と名付けられた演芸場がオープンしました。
昼の部は上方落語が毎日演じられるほか、夜の部では上方落語はもちろん江戸落語や講談、浪曲などの演芸のほか音楽、ダンスなど幅広く楽しめる演目になっています。
座席数は200席あまり。航空機のエコノミーシートを思わせる狭さですが、この狭さが演者との絶妙な距離感を生み、一体となって落語の世界に没頭させてくれます。実際に演芸場に足を運んでみましたが、最初こそ座席の狭さが気になったものの、2時間30分という公演時間があっという間に過ぎていきました。
喜楽館は、神戸電鉄・新開地駅から歩いて2分のところにあります。駅構内から目印となる案内板や幟が目に入るので、迷うことなく行き着けるでしょう。
新開地2丁目商店街とタイアップした飲食店の宣伝やスタンプラリー、さらに街歩きマップが配布されるなど、地域をあげて喜楽館を盛り上げていこうという空気が漂っていて、演芸場周辺は本当に賑やかです。
新開地は最近まで寂れた街でした。戦前から1960年頃までは大きな映画館や飲食店が立ち並ぶ神戸一の繁華街でしたが、1970年以降は中心機能が三宮に移転したため、急速に寂れていったのです。
潮目が変わったのは、阪神・淡路大震災の頃から。震災復興の一環で古びたアーケードを撤去し、新しい建物・施設が次々と建ち並ぶと外見の面目は一新しました。市民団体を中心とした復興策も機能しはじめ、少しづつ賑わいを取り戻し始めています。喜楽館誕生のいきさつも、“神戸唯一の寄席を新開地に”と商店街の若者が1通の手紙を送ったことが始まりです。
神戸の中心地である三宮からは電車で十数分とやや偏僻な場所ですが、平日興行の当日券はすぐに完売するほど盛況です。この1月も休まず毎日興行が行われていますので、喜楽館の「初笑い」で大いに笑って1年をはじめてみませんか。
(有田若彦)