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アネモメトリ -風の手帖-

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#58

家族の軌跡を辿る紋章
― カナダ バンクーバー

日本から飛行機で約10時間。海と山の自然に恵まれたカナダ西海岸に位置するバンクーバーは、大自然を残しながらも都会としての魅力を併せ持った美しい都市です。
ここに降り立つと、どこまでも広がる大空を突き刺すように立つトーテムポールを町のあちこちで見かけることでしょう。しかし、この柱状の木の彫刻は、ただの芸術作品ではなく、カナダの先住民文化と非常に深い関係があります。
トーテムポールには、人のような、動物のような、不思議な生き物が彫られています。それは、先祖から代々伝わる神話や伝説、家族の儀式や日常を人間や動物の姿で表したものです。トーテムポールは、家族の地位や起源、社会的・宗教的な権利と義務、超自然的な経験や結婚や死の儀式を描いて柱に刻んだ「紋章」であり、その家族の歴史を永遠のものとするためにつくられたと考えられています。
トーテムポールの最上部にある彫刻はその一族の象徴となるもので、渡り烏や魚、雷鳥やうみへびなどの神秘的な生物がよく使われています。また、刻まれたリングの数は、ポトラッチという自分の財物を惜しみなくふるまう盛大な宴会を行った回数を表し、最下部の彫刻は、その所有者の家系と縁の深い動物を表しています。トーテムポールは、その家族や地域のあり方と密接な関係があり、建てられた一本一本全てに意味があるのです。
観光客や家族連れが多く訪れるUBC人類学博物館。この博物館の裏庭に再現された先住民ハイダ族の2つの家とトーテムポールがたたずむ姿を見ていると、そこに彫られた物語や動物たちが語りかけてくるのを感じます。先住民が辿ってきたであろう民族の繁栄や切ない歴史を思い起こさせ、何とも言えない気分になります。
バンクーバーに訪れたら雄大な自然やショッピングを楽しむだけでなく、そこに暮らしていた人々に思いをよせてみてはいかがでしょう。トーテムポールをぼんやりと眺めていると、海から吹き付けるひんやりとした風が、心地よくそこに誘ってくれるはずです。

UBC人類学博物館(英語)
http://moa.ubc.ca

(月田尚子)

UBC人類学博物館に再現されたハイダ族の家とトーテムポール。

UBC人類学博物館に再現されたハイダ族の家とトーテムポール。

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