土地の姿、歴史を語るモノやコトの魅力を、作品と併せて体験する芸術祭のようなプログラムが、まるで競うかように各地で開催されています。それに伴い、多様化した芸術活動をマネジメントできる人材へのニーズも高まっているようです。
秋田県においても、秋田公立美術大学による、県内4地域(秋田市、男鹿市、五城目町、横手市)と連携するアートマネジメント人材育成事業「AKIBI plus」が3年目を迎えました。ここでは筆者が携わる五城目町の動きをご紹介します。五城目町では、町内外の受講者が、町の現在に継承された”昔”を自由な視点で捉え直すべく、計5回のリサーチプログラム「今と昔をつなぐアート」に臨みます(1)。
講座には以下の特徴があります。
1)作品を作らない
アートの視点を共有しつつも、アーティストではなく、受講者が見つけた町にあるモノ、それ自体を、作品というより成果として際立たせる。そんな実験を、昨年に引き続き行います(2)。
2)小さな問題に着目する
五城目町は、500年以上続く朝市と豊富な森林資源を活かす手仕事で栄えました。現在は人口が減り、朝市の振興、伝統の継承が悩みどころです。地域と関わると、このような課題に目が向きがちですが、それよりも、自分だけのちょっとした違和感や気になる関心事=小さな問題から洞察を始めます。
計5回のプログラムのうち、すでに行われた第1回では、明治から昭和にかけて農村の暮らしを書き残した農夫の雑記帳にまつわる話をご家族に伺い、第2回では秋田県だけの学校行事「なべっこ遠足」を追体験しました。振り返りの講義では「記録すること、描くこととは?」「食と表現の不可分な結びつき」など示唆の多い話題が共有され、小さな問題を書き出すワークを手掛かりに、各自の関心事を書き留めました(3)。
自分の関心事から自由に捉え、見つけたモノを展示する。作る側の行動原理をいわば擬似体験的に学ぶ講座を終えると、受講者は2018年1月開催の成果展に向けて準備を始めます。
懐古や郷愁とはちょこっと違う、「古きを訪ねる」プログラムにご興味がある方は、ぜひ下記リンクをチェックしてみてください。
AKIBI plus
http://akibi-plus.jp
(小熊隆博)