讒言(ざんげん)をもって琉球王府軍を動かして政敵を滅ぼし、クーデターを企てるも、王府軍に討たれた阿麻和利(あまわり)という人物がいます。このようなことから 阿麻和利は希代の大悪人とされ、これまで沖縄の歴史を題材にした舞台や映画では敵役として演じられてきました。しかし、 16世紀から17世紀に編纂された歌謡集『おもろそうし』には、彼の領地の繁栄ぶりを京や鎌倉に例えたり、 彼が地域の人々に敬愛されていたことがうかがえる祭祀の祝詞が集録されています。
彼が治めた沖縄本島中部のうるま市勝連地区では、そんな地元の英雄の正史とは違う姿を題材にした舞台が作られ、子どもたちが中心となって演じています。それが今回ご紹介する現代版組踊「肝高(きむたか)の阿麻和利」です。この舞台は「子ども達の感動体験と居場所づくり、ふるさと再発見・子どもと大人が参画する地域おこし」を目的として企画されました。
2000年3月の初演のオリエンテーションに集まった子どもたちは、たった7名だったそうです。
しかし関係者の努力により、最終的に出演者150名、2日間の観客4200名と、初演は成功を収めます。その後、県内各地、東京、福岡など日本各地に広まり、2008年にはハワイ公演を実現させ、公演回数281回、観客動員延べ16万人を達成しました。
筆者は2016年12月公演を見てきました。公演プログラムの出演者のコメントには、進学、就職や学業、部活動との両立に悩みながらも舞台に打ち込む情熱や、自身の住む地域に対する熱い言葉が並んでいました。手作りで温かいが、細部まできちんと作りこまれた舞台。すてきな舞台でした。この舞台の公式HP(https://www.amawari.com/ )を是非ご覧ください。
公演の記録写真やHPにある公式Youtubeのリンクから子どもたちが舞台にかける情熱が伝わってきます。高校卒業とともに子どもたちは舞台からも卒業します。そして舞台は次代へと引き継がれてゆきます。
(儀間真勝)