秋も深まり朝晩はすっかり寒くなりました。そんなとき体を温めてくれる心強い生姜。新生姜ごはんや、かき揚げ、ジンジャーシロップを作ってジンジャーエールにしたり、ホットジンジャーにしたりと色々な楽しみ方があります。生産量が日本一の高知県では、11月になると生姜の収穫が始まります。梅雨、夏と季節を経て、春に植えた親生姜からぐんぐんと成長した生姜を、霜が降りるまでの一ヶ月の間にすべて掘り起こし収穫します。
高知県での生姜栽培はいの町から始まりました。今年は生姜の栽培が始まって100年の節目の年だそうで、ご当地グルメとして定着している「いの町生姜焼き街道」も人気です。いの町で3代続く根菜農家の刈谷農園さんの生姜収穫現場にお邪魔しました。
全国1級河川水質ランキング第1位の清流・仁淀川からの水の恵みと、水はけの良い豊かな赤土土壌を活かし、現代表の刈谷真幸さんによって、5年ほど前から慣行栽培だけでなく有機栽培の圃場にも挑戦されています。他の畑の影響を受けないよう山を開墾し、一から土作りをしてきました。その山の畑は2012年に有機JASにも認定され、東京や大阪など県外のオーガニックレストランでも取り扱いが広がっています。
山の上の畑は仁淀川や高知市内が一望でき、風で揺れる木々と鳥の声しか聞こえない静かな場所です。女性の背丈ほどある茎をつかんで掘り起こすひと、生姜の茎を切るひと、その生姜をコンテナに詰めるひと、各担当に分かれて作業しています。生姜を通して出会った農家仲間や、生姜を取り扱っているレストランのシェフらが全国からやってきて収穫を手伝います。生姜の生産現場を自ら知り、生産者と交流し、想いを知ることで、料理を通してその想いをお客様に伝えられているように感じました。生姜が美味しいのももちろんですが、刈谷さんの人柄も魅力です。「ご機嫌さんに」をモットーに、仕事もプライベートも全力で楽しむライフスタイルに自然と心地よい仲間が集まり笑顔が広がるのでしょう。
高知で生活していると、たくさんの太陽を浴びて農家さんの想いのこもったお野菜の元気さに気づきます。そのお野菜を手にし、料理し、食すことは生きて行く上でこれほど豊かなことはないのではとさえ感じられます。食べることで自分はできている、と素直に実感できることは日々を豊かにしていくことだと思います。
(大賀美穂)